快楽亭ブラック毒演会に行ってきた
きょうは「快楽亭ブラックの毒演会」に出かけた。浅草木馬亭。
浅草寺はいつもながらすごい人出だった。これが年始ならとんでもない混雑になる。それにしても中国人環境客が多い。観光地にとっては中国人様様である。
落語をよくご存じない方のために、ちょっと説明しておく。
落語会の異端児といおうか鼻つまみ者といおうか、その筆頭が快楽亭ブラックである。多額の借金で立川流を破門された。タブーネタ、たとえば皇室、宗教、猥褻、北朝鮮などがとび出すので、とてもテレビには出せない。出入り禁止のホールは数知れず、しかし、だからこそ一部に熱狂的ファンもいる。そのファンに支えられて借金を返済している。
映画、歌舞伎を語らせたらその知識はすごいとか、父親は駐留軍の兵士だったとか、四谷怪談の映画を作ったことがきっかけで身辺に不幸なことが数々起きたとか、まあ、そんなことはどうでもよい。とにかくライブで聴くしかない。一年に一度は聴きたくなる落語家である。もっと回数を増やしてもいいが、連続して聴くと食傷する。それだけ毒があるということだ。
真っ赤な羽織り紋付のブラック、マクラは映画ネタから。森田芳光を批判。映画雑誌のアンケートに「死ねばいいと思う映画人」に森田芳光監督を挙げたところ、本当に死んじゃったというブラックネタ。つづいて当然、談志家元ネタとなり、笑いが止まらないということで、落語の演目は「胡椒の悔やみ」となる。まあ、ピッタシの演目ではあるけれど、これを悪びれず演るのがブラック流である。これだけ談志をコケにする噺家はいない。
で、二席目は、「一杯のかけそば」のパロディ、「一発の・・・・・」。季節がらである。三席目は「文七元結」のパロディ、「文七ぶっとい」。いずれもブラックの鉄板ネタ(得意ネタぐらいの意味)で、これも季節がら。
これで終わりなのだが、おまけで、新作途上のネタを、原稿を読みながら演じた。
これが面白かった。
破門した談志は亡くなったが、弟子で亡骸を見たのは一人もいない。家族だけ。
それをベースにしたストーリーである。死んだのは克由という男。息子と娘は遺体を火葬場に運ぶ。古典噺「らくだ」と「黄金餅」をくっつけたような、ほとんどは「黄金餅」のパロディに仕立て上げた。ギャハハハ、という笑いが飛び交う。
もう少し練りあげてからネタおろしをするということだ。
いくらことばを尽くしてもブラック流毒気は説明しきれない。このたび『立川談志の正体』という本を上梓することになった。当人いわく、「談春の『赤めだか』とは正反対の本」だそうだ。
ということで、今年も暮れていく。年の瀬にふさわしいかどうかはともかくとして、ブラック流毒気、悪くない。
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