原発事故独立検証委員会の調査・検証報告書を読む
原発事故調査報告書が書店に並んでいたので、早速買って、そのまま喫茶店に入り、読み始めた。
本書についてはご存じだろう。民間の有識者による委員会が、菅総理ら政府の中枢にいた人から事故直後のありさまをヒアリングしてまとめたものだ。官邸側に東電や保安院に強い不信があったとか、菅総理の過剰介入がリスクを高めた可能性があるとか、東電幹部はヒアリングを拒否したとか、話題になった。
分厚い。四〇〇ページもある。簡単には読み通せない。時間をかけてトロトロ読むしかない。これを「トロ読み」と称しているのだが、読み通すまで何週間もかかる。いや、途中でギブアップするかもしれない。だから「つまみ読み」になるかもしれない。
こう書くと、読みたくなさそうだが、そんなことはない。
わたしは、リスクマネジメントの業務に関わってきたこともあり、こうした事故対応には大いに関心がある。一家言ある。かっこうのケーススタディにもなるのではないかと思っている。
もうひとつは、事故以来切り抜いてきた新聞記事などを一掃して、この報告書に置き換えることができることだ。
知りたいことも多い。SPEEDIデータの公表はなぜ遅れたのか、あるいは意図的に隠されたのか。東電は、必要最低限の人数は残すとしていたが、官邸側は全面撤退と受け止めた。どちらが事実なのか。あるいは、現地と東京での情報ギャップはなぜ生じたのか。
この報告書ですべて氷解できるとは思わないが、幾分かは得心できるだろう。
ごちゃごちゃ書いてもしようがない。読み始めたが、途中をとばし、最終章を読んでみた。
これは納得できるまとめである。リスクマネジメントをすすめる上で、参考になる部分をキーワードとして挙げておく。
初期対応の遅れ。「最初の数時間に、破局に至るすべての種はまかれた」
縦割りの官僚機構の弊害。国家や東電のもっている資源を動員できなかった。「東京電力は官僚機構以上に官僚機構だった」という記述は重い。繰り返すが、東電はこの委員会のヒアリングを拒否している。
もうひとつ。「危機時において求められるのは、整い過ぎたプラン(防災計画)というより、むしろつねに危機に備え、対応できるプランニング(防災計画中)の態勢である。同じ危機は、二度と同じようには起きない」
以前、当ブログでも書いたが、「歴史は繰り返す。しかし同じようには繰り返さない」ということである。
「最悪のシナリオ」に向かっていたが、きわどいところで踏みとどまった。運の要素もあった。「同じ運は、二度と同じようにはやって来ない」
ついでのひとこと
ちょっと「放心流」には似合わない内容になってしまったので、ひとこと添える。菅さんがこの報告書を読んで「ありがたい」と述べたのはご記憶だろう。その気持わからないでもない。
どうして? と思われるかもしれない。とりあえずはお読みいただきたい。
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