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2012年3月31日 (土)

サントニンという黄色い世界

長い間、花粉症に苦しめられてきた。

まだ花粉症などという言葉が知られていないころから、この季節、眼はかゆい、鼻はぐじゅぐじゅという症状が出ていた。困るのは寝ているとき、両方の鼻の穴がつまることだ。口で呼吸をするので喉をやられる。これがつらかった。それが4月末、ゴールデンウイークになると、ぴたりと症状は治まる。毎年、この繰り返しだった。

ある時から、点眼・点鼻薬や飲み薬を処方してもらうようになった。症状は幾分緩和したが、飲み薬のせいで、からだがだるくなった。抗ヒスタミン剤は眠くなるというが、わたしの場合はだるくなった。

なぜ花粉症になるかというと、免疫系がスギ花粉に過剰に反応するようになったからである。過剰反応するようになった理由として、従来、寄生虫に反応するはずの免疫機能が、寄生虫がいなくなったことにより、閑だからスギ花粉に反応するようになったとの説がある。脾肉の嘆をかこつ免疫系の兵士が、さあ外敵が来たかと、敵でもない相手に大げさに騒ぎ始めたと思えばよい。諸説の中でもこの説がいちばん説得力があるように思う。

いま、回虫などの寄生虫はほとんどいなくなった。学校での検便でもゼロだそうだ。

むかし、私の小学校時代は、検便をすると最低でもクラスの二割は回虫保有者だった。私もその一人で、回虫駆除薬のサントニンを飲まされた。あのサントニンという薬には副作用があって、視野が黄色くなる。黄色いセロハン紙を透かしてみるような風景が半日ほど続く。太陽が黄色く見えたという表現がある(近頃は聞かない)が、太陽だけでなく、世の中すべてが黄色いフィルターがかかったように見える。あれは奇妙な体験だった。

ところで花粉症だが、近頃は症状も緩和してきた。薬でがっちり抑えてきたのだが、それほど飲まなくても症状は軽くなった。不思議なことだが、ここ数年はさほど苦にはならない。

なぜか。最大の理由は加齢ではないかと考えている。歳をとると免疫力が減退する。若いころは、スギ花粉に異常に反応したのだが、免疫力の衰えによりスギ花粉に出合ってもそれほど反応しないようになった。たぶんこういうことじゃないかと思う。

免疫力が衰えるのはよくないけれど、ひとつぐらいはいいこともある、ということだ。

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