じっと指先を見つめる
三浦しをんの国語辞典作りをテーマにした『舟を編む』のなかに、「ぬめり感」という表現がでてくる。
国語辞典の用紙はたいていが特注となる。薄く、強く、インクが乗りやすく、裏写りしないことが必須だが、めくりやすさがないといけない。指の腹に吸いつき、一ページずつめくりやすくというのが、ぬめり感である。そのぬめり感を追求して印刷会社とやり取りする場面がある。なるほど紙も薄けりゃいいってものではない。
しかし、現実には、なかなか指に吸いかない。指を舐めないとうまくめくれない。ぬめり感に欠ける。
いや、わかっている。ぬめり感がないのはこちらの指のせいである。油気がなく、指先がツルツルになっているので、新聞などとくにそうだが、指舐めをしないとめくれないのだ。中高年おやじが書類を舐めながらめくるのでバッチイと批判されることがあるが、あれは致し方ないのだと理解してほしい。
自分自身の指をつくづく眺め、さすってみると、ツルツルである。指紋も消えかかっている。縦じわが目立って指紋がまったく見えないときもある。これじゃあ、いくら紙の方にぬめり感があってもダメである。湿り気が必要。指舐めもいたしかたないと居直っている。
指サックも鞄の中に入れているが、面倒なのでたまにしか使わない。指を舐めたほうが手っとり早い。
辞書の紙とコンドームは薄いに限る。ぬめり感ってのも大切で・・・、なんていうと変な方向にいきそうなのでやめておく。
ついでのひとこと
さらに言うと、ページをめくったあと、指からすっと離れていかなければならない。ぬめり感があっても次のページがくっついてきてはいけない。それを「情が深いが去り際のきれいな女」と表現している。なるほど。
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