談春独演会 ベストポジションで聴く
立川談春のチケットを入手するのはかなり難しい。それほど人気があるということだ。うまさでは間違いなくトップクラス。ただし談春よりおもしろい噺家はたくさんいる。人気が先行していると思うが、私がとやかく言うような問題ではない。
今回、運よくチケットが入手できた。成城ホール。座席は前から二番目、正面よりやや右側、絶好のポジションである。
演目
かぼちゃ屋
星野屋
景清
前座による開口一番は無し。不機嫌そうに登場して短めのマクラ。「かぼちゃ屋」である。このあたりは手慣れたものである。この前座噺をみっちり丁寧にやって、つづいての演目は「星野屋」。この噺は知らなかった。談春の追っかけファンなら何度も聴いていると思うが。
旦那が妾の気持を確かめるために心中を持ちかけ、吾妻橋から大川に飛び込む。しかし女はあとを追わない。で、女と男の化かし合いのような展開となる。化かし合いの妙がこの噺のおもしろさ。心中ものでは「品川心中」が有名だが、その下巻(あまり演じられないが)を男女逆バージョンにしたようなストーリーである。
中入り後は「景清」。マクラは無し。いきなり盲人が登場。これは「景清」とわかる。
めくらとなった職人の定次郎は御利益があるとされる日朝様に願をかけるが、満願の日、隣で願をかける女と手を取り合う仲になる。そのせいか御利益はなく目は明かない。腹をたてるが、旦那から説得され、今度は、浅草、清水の観音様に百日の願をかける。いっこうに御利益はない。目が明かないなら明かないとはっきり言ってくれ、ならば諦めもするが何も反応がなくては、お百度の意味がないではないか、とんでもない観音だと悪態をつく。その帰り、雷が落ちて・・・、という物語である。
ああそうかと、ここで気づいた。一緒にいた旦那は雷が鳴って逃げてしまう。「星野屋」の妾も大川に一緒に飛び込まず帰ってしまう。登場人物の片方が逃げてしまう。ふたつの演目のテーマがここで繋がる。なるほどね。
見どころ聴きどころは、いっこうに御利益がなく、賽銭返せと観音様に悪態をつき、お袋が手間賃を貯めてくれた大切な金だと叫ぶあたりか。このあたりの熱演にファンは魅了されるのだろう。
談春はうまい。うまいがオーソドックスに過ぎて、いまひとつ面白みがない。その場の雰囲気で脱線したりして出来不出来がある噺家の方が、独演会に行っても楽しいように思うが、どうだろうか。
ついでだが、客席に吉川潮さんを見かけた。落語評論家でもあるから当然か。松島トモ子さんも見かけた。だからなんだというわけではないが、目が異様にでかい。
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