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2012年7月 4日 (水)

 幕末の医療水準  順天堂記念館 

先だって、佐倉(千葉県)の国立歴史民俗博物館に行ってきた。想像以上に見応えのある博物館で、一日いても飽きないけれど、半日で、くたびれた。また、機会を見つけて行ってみることにする。

帰りがけ、順天堂記念館に回った。佐倉は順天堂病院発祥の地である。幕末、天保14年(1843)に蘭医・佐藤泰然によって蘭医塾兼外科の診療所として創設された。順天堂が幕末から明治にかけて医学関係の人材育成や医療の向上に果たした役割は大きい。

順天堂とは直接の関係はないが、泰然の子に松本良順がいる。良順は幕末の御殿医(家茂の侍医)で、新撰組の壬生の屯所の衛生指導や会津では傷病者の治療も行っている。江戸では非差別民の解放(治療や差別撤廃)に力を注いだ人物で、明治以降も近代医学の普及に努めた。牛乳の飲用とか、健康のために海水浴場を推奨したりもした。松本良順の奔走ぶりは大変興味深いが、その話は別の機会に譲る。

 記念館に、へーっと興味を引かれた展示物があった。「療治定」の額である。

療治定とは、治療の料金表である。安政元年(1854)あたりの扱っていた治療とその料金のあらまし(荒増)を書き出したものだ。

たとえば、「乳癌剔出方 金千疋」、「睾丸癌腫切断 金千疋」、「割腹出胎児術  金十両」などとある。疋は十銭(文)である。

幕末の一両がどのくらいの額になるか、換算は難しい。一両十万円ぐらいとよく言われるが、そんなに単純なものではない。慶長年間(家康の時代)なら一両は二十万円はした。中期では十万円ぐらいになる。幕末は変動が激しく、数万円、場合によっては一万円程度になる。一両は、四千文から六千五百文ぐらいになり、幕末はもっと文の価値は下がった。だから、この料金表を見ても、今ならどのぐらいになるのか、よくはわからない。ざっと見当をつけると、乳癌手術は数万円か。

割腹出胎児術とは帝王切開のこと。これが十両とは他の手術に比べ割高に感じる。

「包茎開皮術 金二百疋」、「造鼻施術 金十両」。ふーん、そういう整形手術も行っていたんだ。

「白内翳施術 金千疋」などというのもある。白内障の手術も江戸末期にはやっていたことがわかる。幕末とはいえど医療の水準はけっこう高かった。

「療治定」を眺めているだけでも、あきない。

 末尾に、その定の写真の一部を載せておく。

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