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2012年8月13日 (月)

新・日本の話芸 こしら・馬るこ・きつつきの会 2

 

こしら・馬るこ・きつつきの落語会に行ってきた。

 こしら・一之輔の二人会がいちおう終わり、その続編としてこの三人の会になった。今回が二回目。前回は都合で行けなかった。三人は、伸び盛りの若手噺家である。

 この会をプロデュースした広瀬和生さんは、立川こしらを「掟破りの異端児」、鈴々舎馬るこを「何でもありの自由な芸風」、三遊亭きつつきを「熱血のストロングスタイル」と呼んでいる。要するに、古典落語の窮屈さを脱して、自由な発想で愉快に演じることを目指している噺家ということである。正統派ではなく爆笑系ね。

演目

立川こしら     「船徳」

三遊亭きつつき 「出来心」

鈴々舎馬るこ  「牛ほめ」

こしら

本ブログでもしばしば採り上げる噺家である。噺家らしくなく、ロングヘアーのフリーターのようである。落語の基礎を学んでいない、それが逆に持ち味となっている。先代の三平を思い出していただきたい。師匠の志らくでさえ見放しているようにも見えるが、愛すべきキャラクターで、いじられ上手である。
 今回は「船徳」。夏にふさわしい演目である。話の筋は古典どおりで逸脱はしていないが、くすぐり(ギャグ)はこしら風。途中、「竿は三年、櫓は三月」というせりふが入るのだが、「竿は三年、櫓はむにゃむにゃ」とやった。会場から笑いが起きる。こしら「櫓は何年でしたっけ」と客席に問う。客席から「ミツキ」とささやきの声。「えっ、三月。ずいぶん短いじゃないですか」と、こしら。このあたりがこしらのうまいところ。自らのど忘れを笑いに変えちゃう機転がすごい。私も「船徳」の、この三月の部分は短いじゃないかと感じていたので、この反応には納得である。

きつつき

 この人も噺家らしくない。風貌は若手のプロ棋士風。暗い将棋オタクのようにみえるが、赤いメガネをとってしゃべり出すと、ふつうの噺家になる。この三人でふつうなのは私だけとマクラで語っていた。そうかもしれない。

 今回は「出来心」。ドジな泥棒の話である。落語に登場するのはマヌケな泥棒ばかりである。それをきつつき風にうまくアレンジして、独自の泥棒像をつくっている。けっこうでした。

馬るこ

風貌は、丸顔でメタボのお笑い芸人。この中ではいちばん噺家らしいかもしれないが、髪型は噺家らしくなく、ちじれたロン毛である。マクラは訳知りの旦那の話。ということは、「やかん」でもやるのかと思った。談志得意の演目である。リスはリステリンが語原、口をモグモグ、クチュクチュしているからとか、パンダはシロクマに黒いタトゥーさせたものとか笑わせる。ここまでの20分がマクラ。長い。ここから「牛ほめ」に入る。
 牛ほめは前座噺である。与太郎が新築した伯父さんの家を誉めに行く噺である。「左右の壁は砂摺りで、畳は備後の五分縁で」と誉めるところを「佐兵衛のカカァはおひきずり、畳は貧乏のボロボロで…」とずらして笑いをとる。ふつうは和風総檜の家という設定だが、馬るこは、現代風にデザイナーズ・ハウスに変えてしまう。だから、シャンデリアがでてくる。これを「サイゼリア」に変えてしまうというぐあいに、骨子以外はすべて創作。これが馬るこ風「新・牛ほめ」である。

 ということで、三人とも笑わせていただきました。

ついでのひとこと

爆笑のうずなのだが、客席は半分ほどしか埋まっていない。この三人、まだまだメジャーでないということだ。で、この会を宣伝すべくポッド・キャストを近いうちに(総選挙より早いと思う)始めるそうだ。内容は三人と広瀬さんのトーク。いちどネットで聴いていただきたい。たぶん、笑えると思う。

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