「あなたへ」 じっと手を見る。
降旗康男監督、高倉健主演の「あなたへ」。まあなんとも、つくりたい映画を好きなようにつくったものである。
降旗監督の情熱と健さんの心意気のもと、気心が知れたスタッフ、おなじみのキャストが集結した。田中裕子、ビートたけし、大滝秀治・・・降旗映画ではおなじみの俳優。そこに、あらたに芸達者な俳優も加わった。チョイ役でもいい味をだしている。
富山刑務所の指導技官・倉島(高倉健)は最愛の妻を亡くす。故郷の海に散骨してほしいとの遺書(手紙)を受け取り、キャンピングカーで妻の故郷・長崎へと向かう。
富山から岐阜、大阪、門司、長崎へと移動するロード・ムービーである。ロード・ムービーは観光地巡りという側面もあって、竹田城址のみごとな景観が映し出される。この城址で妻役の田中裕子が宮沢賢治の「星めぐりの歌」を静かに歌うシーンがある。刑務所でも同様に歌う。印象的な回想シーンである。
いい映画だが、気になったことを挙げておく。健さんの手である。年齢設定は六十代前半。健さんは現在八十一歳。あいかわらずかっこよく、顔は六十代前半で通用するが、手がいかにも老人なのである。しわしわでシミだらけ。健さんは手が一番老けている。老け手を発見したのは十年以上前の映画「鉄道員・ぽッぽや」である。鉄道の制服を着て白い手袋をしていたのであまり目立たなかったが、手袋を脱ぐと老人の手であることに驚いた。こんなに老けているのかと健さんに老いを感じた。今回も手が気になってしょうがなかった。案の定、古老のしわくちゃの手であった。化粧するなり、ソフトフォーカスでごまかすということはできなかったものかと思う。
もうひとつ。風鈴をみつめながら妻が「季節外れの風鈴の音ほど哀しいものはない」とか言うシーンがある。最後にも同じシーンがある。これがよくわからない。季節外れでも風鈴の音を哀しいと思ったことがない。なにか重要なセリフだったのだろうかと、ちょっと気になった。ただそれだけのことだけどね。
よけいなことだけど、散骨のシーンはあれでいいのかちょっと引っかかった。散骨には行政の許可がいるはずだが、それを受けた様子がない。坊さんも牧師も立ち会っていないけど、ま、あれでいいのでしょうな。 骨粉を撒くというのではなく、海に流す。これはこのほうがいい。水面に手がつけば、なおよいのではないか。
ついでのひとこと
骨を撒くシーンがある映画というと「復讐するは我にあり」を思い出す。洋画だとラッセ・ハルストレム監督の「ショコラ」、そして「シッピング・ニュース」。「シッピング・ニュース」は散骨というより、叔父の遺骨をクソ壷にばらまく。そのときのジュディ・デンチの怖い顔が忘れられない。
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こんにちは。
私も、風鈴のシーンは2度以上、おもわせぶりに出てくるので、映画の後も気になりました。
今考えてみると、刑務所内では時が止まってていて、外では時が流れていて、とかのやりとりがありましたよね。そして、結論的には、自分の時を止めるのではなくて、時を生かす生き方が大事で、それが妻の遺言ではなかったかと思うのです(私の解釈ですが)。
したがって、風鈴も時を無視して、置き去りにされると可愛そうなものなので、現在という時を大事にしてね、という妻の真意の、伏線ではなかったかなあ、と思い始めたのですが、いかがでしょうか。
私も、自分のブログには、この映画を観たあと、初めて感想文をアップしてしまいました。ご覧いただけると、幸いです。
Sora
投稿: Sora | 2012年8月28日 (火) 11時57分