原発ゼロへの取引
この夏、ロンドン・オリンピックがあった。高校野球も桐光の松井裕樹くんの三振ショーもあり盛り上がった。心配された電力不足も猛暑にもかかわらず緊急事態となるようなことはなかった。東電区域では原発ゼロでも平気だった。大飯原発もフル稼働するほどでもなかった。
「なんだ。やれば、できるじゃん」。好きなことばではないけれど、そう言いたくなる。この夏を乗り切ったということは、原発ゼロでもいけるということになる。それが明らかになったということだ。
しかし電力会社は原発ゼロとか脱原発とは言わない。再稼働に向けての準備を進めているようだ。原発なしでもやっていけるのに、なぜ脱原発と言わないのか、理由があるんだそうだ。
原発施設は稼働しないならば遊休資産になる。動かさなければ、廃棄対象になる。企業会計ではこうした資産は除却して特別損失で計上するルールになっている。つまり、キャッシュフローとは関係がないが、一気に除却するとバランス・シート上で大幅な狂いが生じ、電力会社によっては債務超過となってしまう。これを電力会社はおそれている。廃炉費用も計上しなければならないし。
稼働しなくても稼働するぞと言い続けていれば、除却せず減価償却できる。しずかに資産を減らしていけることになる。
そういえば、少し前、電力料金改定にあってコスト計算に原発の減価償却費を計上するのはおかしいとの識者の意見があったのを思い出した。べつに、いいじゃんと思ったが、そこまで考えてはみなかった。
風力、太陽光などの発電量も増えている。電力会社は原発ゼロでもやっていけると心の中では思っている。原発は廃棄物処理などの後始末も大変だし、近隣住民との折衝も煩わしい。でも、一括処理はなあ、ということだろう。
ならば、こういう取引はどうだろうか。電力会社は原発再稼働はしない、新設もしないと宣言する。ただし、現存の設備については、費用を繰り延べできる、つまり減価償却処理を認める。
これで、脱原発の方向が明らかにされれば、みな、安心するのではないか。政府のパブコメでも、2030年時点の原発依存度をゼロとする意見が圧倒的に多くなっている。原発の寿命は40年プラスアルファであり、稼働するかどうかにかかわらず、いずれ寿命が来る。新設は反対意見が多く、まず無理だ。アメリカだってスリーマイル事故以来、30年以上一基も造られてはいない。
原発ゼロに向かっている。
電力会社は原発ゼロを宣言する。そのかわり減価償却を認める。サンデル先生、こうした取引は公正(JUSTICE 正義)といえるんじゃないでしょうか、どうですか。
ついでのひとこと
大飯原発再稼働にあたって、手術中に停電があっては大変だ、透析ができないと患者の命にかかわるなどとの意見が出ていた。大病院では自家発電装置を備えている。大工場では売電できるほどの設備を持っているところもある。計画停電は不便で、困るけど、世がパニックになるようなことにはならないだろう。
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