市馬・喬太郎 ふたりのビックショー
市馬・喬太郎という落語界の大立者の会に行ってきた。中野までわざわざであるが、わざわざ出かけただけのことはある。
ふたりの他に、柳亭市也、柳家さん弥、寒空はだか(ぴん芸人)、恩田えり(お囃子)も出演したが、コメントするほどのこともない。さん弥の伊勢音頭はスゲエ下手だったし、寒空はだかの歌も最低。でも、若い人には受けていた。そのあたりがよくわからない。
柳亭市馬
市馬はマクラ短めで、「御神酒徳利」。市馬の得意ネタのひとつ。市馬の芸が一流であることを世に知らしめた噺である。
大店(宿屋)の大掃除で由緒ある御神酒徳利が行方不明になる。大騒ぎになるが、二番番頭が甕の中に片付けておき、それを忘れていたのである。夜、家に帰ってから思い出し、あわてて店に帰ろうとするが、女房がそろばん占いで行方を捜したらどうかと提案する。もちろん、たちまち行方はわかることになるが、番頭の占いはスゴイとなり、折から宿泊していた大阪の鴻池の支配人から鴻池の娘が病身でどうしたらよいか大阪まで行って占ってくれと頼まれる。もちろん占いの力はないので断るが、断り切れず大阪にまで出掛けるハメになる。途中、神奈川の宿では・・・といったストーリー。たっぷり聴かせる噺である。
何度聴いても、市馬の噺は耳に心地よい。適度なくすぐりも入って、聴かせる芸になっている。
柳家喬太郎
喬太郎の出囃子が寒空はだかの「東京タワーの歌」(スカイツリー音頭だったかもしれないが、忘れた)。観客は笑いながらこれに手拍子で合わせる。で、喬太郎が登場。「ここはヘルスセンターか!」。このあたりの反応が喬太郎の持ち味で、場の雰囲気を一気に喬太郎ワールドに取り込んでしまう。
マクラは、特撮博物館に行ってきた話。ウルトラマンには詳しくないといいながら、オタクのようなトリビアな話になる。こちらは、こういう話題にはついていけない。観客の半分、つまり高齢者はウルトラマンなどには関心がない。二号だ三号だと言われてもわかんない。ベテラン噺家はそのあたりの空気はきちんと読めるからさっと切り上げ、中高年向きの話になる。
演目は「明日に架ける橋」。これは還暦を迎えた男が赤いちゃんちゃんこを脱ぎ捨て(実際、ピンク色の羽織を着ていて、途中で脱ぎ捨てる)、ミユキの背広を着て(ミユキ、ミユキと鼻歌)、飲みに出かける物語である。同じような男がいて、背広の袖をつなげて隅田川に流す。要するに「白線流し」のオジサン版である。東宝のサラリーマン映画のようなギャグをまじえるのが、いつもどおりの喬太郎噺である。
さて、途中のミユキの背広。これはオジサン向きである。御幸毛織のコマーシャルソング(日曜の午前中にやっていた「野球教室」で流された)を口ずさむ。ミーユキ、ミユキ・・・・(サビ)紳士だったら知っている、服地はミユキと知っている・・・ミユキテックス、ファンシーテックス・・・。熟年男性ならこのコマーシャルソングを歌える。若い人はなんだかわからないと思うが、オジサンの頭にはすっかりしみ込んでいる。御幸毛織の背広となるといくつかの思い出があるが、この話はやめておく。
はい。ということで、喬太郎の話芸、充分堪能させていただきました。
ついでのひとこと
うしろの座席にいた若い女、げらげら笑う。つまらないギャグにもばか笑いする。周りがしらけるほど笑う。こういう女がいっぱいいると芸人は、ウケタ! と、勘違いするんじゃなかろうか。
そんなに面白いですか? と、つっこみたくなる。
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