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2012年10月11日 (木)

老婆の病状

 

 桂文珍の落語に「老婆の休日」がある。ローマではなく、龍馬でもなく、老婆ね。

ストーリーはなく、おばあさんたちのエピソードを重ねただけだが、おもしろい噺である。とくに笑えるのは、おばあさんが病院の先生に病状を訴えるところ。「指で頭押さえても痛い、痛い。胃を押さえても痛い、痛い。足押さえても痛い、痛い。どこ押さえても痛い、痛い。わたしもいよいよ・・・」と病状を語る。で、先生の診断。「指の骨、折れてます」。
 文字にすると面白みは半減するが、文珍の話芸になると、爆笑ものになる。

 実際、病院に行って思いがけない診断が下されることがある。
 知人の母親に痴呆の症状が出てきた。急に、である。いよいよきたかと覚悟し、病院に連れていった。脳のCTだかMRIの結果、硬膜が陥没していることがわかった。直ちに手術をすると、痴呆症と思われた症状はたちまち解消した。原因は転倒による頭部打撲であった。転んだとき、手首を打ったことは家族に告げたものの、頭を打ったことは家族に黙っていた。家族に迷惑をかけまいとする気持と恥ずかしいから言うのをためらったようである。
 あちらこちらが痛いと症状を訴えることもあれば隠すこともある。自転車で何度も転んだのに痛さをこらえ、誰にも言わない老人もいる。からだには打ち傷。さては老人虐待かと疑われるなんてこともある。
 こういうことがあるから、家族はじっくり観察しなければいけないし、医師も問診の裏に隠された症状を正しく把握することが求められる。とはいえ口で言うほど簡単ではないけどね。

 ところで、冒頭の小話、実は、外国映画にもでてくる。イランのキアロスタミ監督の「桜桃の味」
 男が医者に訴えた。「先生、指でからだを触るとどこも痛い。頭を触ると頭が痛い。足を触ると足が痛い・・・・どこも痛い」。医者は男を診て言った。「からだはなんともない。ただ指が折れている」。
 イランにある小話か、それとも世界中にある小話かどうかは知らないけれど、文珍はこの映画でヒントを得たのだろう。と思うのだが、ひょっとすると逆かもしれない。キアロスタミは日本通でもある。文珍の落語をヒントにして・・・とも考えられる。その可能性は薄いが。

 それにしても、この小話は面白い。傑作である。

 

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