あったか落語、ぬくぬく。 鯉昇・市馬・兼好三人会
「あったか落語、ぬくぬく」に行ってきた。第三回である。
演目はつぎのとおり。前座の開口一番は省く。
瀧川鯉昇 千早振る
柳亭市馬 松曳き
三遊亭兼好 大山詣り
前にも言ったが、タイトルどおり、やや緩く、ほんわか系の落語会である。
鯉昇はゆっくり登場し、客席を眺め、一呼吸おいて静かに口を開く。芸術協会の柳昇門下はおとぼけ系が多い。小柳枝、桃太郎、鯉昇。昇太もその一門。鯉昇はほんわかした雰囲気が持ち味で、マクラでも、まじめな話かと思いきや、さりげなく定食と停職をかけたギャグで笑わせる。
演目は誰でも知っている「千早振る」だが、鯉昇の手になると、立田川がモンゴル出身の相撲取りになる。今ならあり得るか。千早太夫はモンゴルまで出かけ、モンゴル豆腐のおからをもらおうとするばかばかしい噺になる。で、オチの「とは」は、まあ、言うのはやめておきましょう。
続いて、市馬が登場。落語協会にはできない芸と芸術協会の鯉昇を誉める。あのふわふわ感がたまらない、努力の跡を見せない芸、客席で聴いていたいと語る。そうだよね。あのとぼけた感じは同じおとぼけ系の噺家でも持ち合わせていないフラ(噺家としての独特の持ち味)である。
で、演目は「松曳き」だが、あまり演じられることはないのではないか。談志バージョンを聴いたことがあるような気がする。CDでだが。松曳きというタイトルは殿様が月を見るのに庭の松がじゃまになるから移せないかというところからきているが、本筋とは関係ない。家来の三太夫の粗忽ぶり(早とちり)が笑わせどころで、殿様も早とちり。オチが面白い噺である。市馬は、いつもどおり、ゆったり、余裕をもって演じた。
さて、今回のトリは兼好。山登りの小話をいくつか披露して「大山詣り」となった。いきなり、最後の宿、神奈川宿のシーンに入る。この噺は、大山詣りの前に熊さんを連れていくかどうかで揉め、騒動を起こしたら坊主にするという決めごとをするシーンから始めるのだが、そこを飛ばす。兼好は、私は古典噺でも枝葉は殺いですっきり単純なストーリーにすると語っていたが、この噺もそうしている。熊さんを除いてほかの連中は金沢八景に立ち寄ることで時間差をつけることになっているが、そこも飛ばす。ただし、熊さんの頭を剃る、このシーンだけは丁寧に演じた。その剃るシーンの愉しそうなこと、ルンルン気分で剃る。これぞ兼好の持ち味である。以前書いたように「業の無毒化」に繋がる。ひたすら明るく、愉快に演じた。
ということで、冷え込んだが、あったかい夜でした。
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