十一代桂文治の落語会 ひょうきん顔
桂文治の落語会に行ってきた。レストラン(よみうりランド駅前の棕櫚亭)をにわか寄席にした会場だから、狭い。その分、噺家との距離が近い。砂かぶりではなく唾かぶりのような席で聴いた。迫力はある。
開口一番は、桂小蝠(コフク)の「元犬」。小蝠は巨体。携帯用の正座補助椅子をつかっての一席だが、それでも足がしびれたと言って高座を降りた。あはは、である。
文治は昨年、平治改め11代文治を襲名した。先代の文治はご記憶であろうか。文治という名よりもその前の桂伸治の名を憶えておいでの人も多いだろう。よくテレビに出ていた。小柄で丸顔。愛嬌のある噺家だった。11代文治はその弟子。
高座のマクラで、その先代の思い出を語った。ひとことでいうとケチだったそうだ。切符を拾っておいてそれをつかって改札を出るなんてのは日常であった。タバコは吸わなかったけどキセルはやったというオチがついた。
文治の演目は、「禁酒番屋」と「味噌蔵」。いずれも酒をのんで酔っ払うシーンがある。こういう酔っ払いを身振り手振り交えて明るく演じるのが文治のスタイルである。いずれも得意ネタ。
「味噌蔵」は味噌屋を商うケチ兵衛さんの噺である。先代文治を思わせるような締まり屋で、子どもができると金がかかるので嫁をもらわないというぐらいのケチ。そのケチ兵衛さんが留守をすることになった。これ幸いと番頭や丁稚たちが大宴会をする。ここで定番のセリフが入る。どがちゃか。算盤をはじくしぐさをしながらどがちゃかと言う。意味は、帳面をごまかして金を浮かすほどのことだろうが、なぜそれが、どがちゃかとなるのかはわからない。わからないけど、おもしろい。「味噌蔵」と言えば「どがちゃか」なのである。
平治師匠は落語家らしい落語家と言われる。落語家というイメージから連想されるものを身につけているからだろう。
滑稽噺を得意とする。わかりやすい落語だから素直に聴けるし、落語になじんでいない人でも楽しめる。しぐさも大振りで滑舌もよい。さらに、あの、ひょうきんな顔がなんともいい。
« 鯉昇・文左衛門 長講たっぷりの会 | トップページ | 大須界隈 巣鴨と原宿がまだら模様に存在 »
「落語」カテゴリの記事
- 鶴川寄席 扇遊・鯉昇二人会 (2025.06.08)
- 生田寄席 橘家圓太郎(2025.06.06)
- 八起寄席 たけ平(2025.05.21)
- 雲助・左橋二人会(2025.05.07)
- アルテリッカ演芸座 二つ目落語会(2025.05.05)
コメント