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2013年2月 5日 (火)

大看板逝く   団十郎と助六

団十郎が亡くなった。

歌舞伎には疎い。落語との関連で知っている程度で、大した知識はないけれど、団十郎が大看板中の大看板であることは承知している。新しい歌舞伎座の舞台に立つことができなかったのは本人もファンも残念であった。
 思い出すのは、三年前の歌舞伎座でのさよなら公演である。団十郎は助六を演じた。揚巻が玉三郎で、髭の意休が左団次。その他脇役まで大物が並んだ。白酒売りに菊五郎、通人里暁に勘三郎、仁左衛門、福助、三津五郎。冒頭の口上は海老蔵だった。普通の公演ではありえないキャスティングである。

 「助六」は歌舞伎界にとって特別な演目である。江戸の初期まで歌舞伎は浅草弾左衛門配下にあった。今でいう興行権は弾左衛門が押さえていた。それを訴訟に持ち込み、その配下から逃れた。その記念として「助六由縁江戸桜」が作られた。助六の敵役・髭の意休は弾左衛門がモデルという説がある。そのあたりは歌舞伎をみてもよくわからないけれど、当時の人なら理解できたのかもしれない。現在までに何度も作りなおされているので、初演当時の意図は消されてしまっているのだろう。いずれにせよ、特別な演目であることには間違いない。

さよなら公演で人気をさらったのは勘三郎である。アドリブで笑わせた。団十郎には、「孝俊ちゃん(海老蔵)、よかったね」と海老蔵の結婚を祝った。例の六本木殴打事件の前である。菊五郎には「しのぶちゃん、おめでとう」と娘・寺島しのぶのベルリン国際映画祭での最優秀女優賞を祝福した。菊五郎は笑いを堪えるしかなかった。花道では場内を見渡して「さようなら、さようなら」と決めぜりふ。見事であった。その勘三郎も新しい歌舞伎座の舞台に立つことはない。

歌舞伎界は大看板を立て続けに失ったことになる。でも、まあ心配することもあるまい。大看板候補はいる。杮落としのチケットは即完売になるだろう。

それにしても、歌舞伎の入場料は高い。もっと安くならないものか。落語会なら10回は行けるぞ。

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