「フライト」 要するにアル中映画よね
予告編を観ればおよそのことはわかるという映画がある。この「フライト」も予告編ですくなくとも設定はわかる。航空機が墜落の危機に陥るが機長の的確な判断でなんとか緊急着陸に成功する。機長は英雄視される。ところが事故調査により機長の体内からアルコールが検出され、一変して、疑惑の人となる。といったことはあるが、それをくり抜け、めでたしめでたしとなるという映画かなと想像した。
でも、監督はロバート・ゼメギス。「バック・トゥ・ザ・フュチャー」や「フォレスト・ガンプ」といった娯楽映画の傑作をつくっている。そんな単純な物語ではあるまいことも予測できる。
予告編からは伺えないもう一つのストーリーが並行して描かれる。薬物依存症の女性が登場する。奇跡的な着陸に成功したウィットカ―機長(デンセル・ワシントン)と薬物依存の女性・ニコルと入院中の病院で出会う。そして恋に落ちる。
機長は妻子と別れている。原因は酒である。アルコール依存症であった。事故の当日も、酒を飲んでいた。結末まで書くわけにはいかないが、それほど大きな展開はない。アルコール依存症であることを必死に隠そうとする仲間に支えられていく様子が描かれる。しかし、ウィットニーは酒の誘惑から逃れられない。
ニコルの方のストーリーもふくらみがないので、映画全体の展開は期待したほどではない。その分、わかりやすいといえばわかりやすいけど。ああ、こんなものかというのが正直な感想である。ゼメギス監督作品にしては出来はよくない。
おもしろかったのはアルコール中毒患者の集会である。ローレンス・ブロックの探偵小説・マッド・スタガーシリーズを思い出す。アル中だった私立探偵・スタガーはAAの会(アル中の更生組織。体験を語る会)に出て、話を聞く。そしていくばくかの寄附をすることを日常としている。AAの会とはこんな様子だということがわかった。
ついでのひとこと
アル中患者はウソをつく。アルコールへの依存度が高いほど、ウソをつき、依存から脱出できない。また手を染める。そのあたりは旨く描けていた。落語「芝浜」の勝五郎もきっぱり酒をやめたということになっているが、現実は、ま、そううまくはいかない。
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