親孝行と養老の瀧
本屋で「落語・講談に見る親孝行」というNHKラジオのテキストを見つけた。4月から始まった講座のテキストである。いまどき、親孝行とは珍しい。私は「孤独死と親不孝は戦後民主主義の成果だ」と広言している人間だから、親孝行は似合わないのだけれど、親不孝と言うからには、親孝行も勉強しておかねば片手落ちになる。そう思い、テキストを買った。なに、「落語・講談に見る」とあったから、それに惹かれただけのことだが・・・。
少し読み始めたが、その内容についてきょうは触れない。親孝行から思いついたことを挙げてみたい。
まず浮かんだのは川上哲治である。打撃の神様、巨人軍の名監督であった。監督を長嶋に譲った後、NHKの野球解説者となった。その解説がおもしろかった。親孝行を讃えた。「いい選手ですねえ。親孝行ですから」などと解説した。親孝行で野球がうまくなるかよと批判もあり、それを真似する芸人も現れた。それがおもしろかったので、ご記憶の方もいらっしゃると思う。ほんとうにそんなこと言ったのと疑問に思う人もいるかもしれないけれど、多少誇張はあるとしても、そう発言した。実際、私はラジオで聞いたことがある。えっと驚き、笑った。
川上さんは実際、親孝行と野球のうまさとの相関性を信じていたものと思われる。
つぎに思い出したのが養老の瀧である。岐阜県養老町にある滝で汲んだ水が酒になっていて、それを父親に飲ませたら目が見えるようになったという養老孝子伝があるが、思い出したのは「養老の瀧」という居酒屋チェーンである。
ずっと昔のことだが、近所に養老の瀧があった。店の入り口に「親孝行の店」というステッカーが貼ってあった。この店はフランチャイズで、おそらく親子で営んでいたのであろう。息子(娘かもしれないが)は親の仕事をきちんと手伝っていた。それをチェーン本部は表彰し、その証としてステッカーとなったものであろう。
養老の瀧という名称は、創業者が孝子伝説からつけたのだろうから、このチェーンが親孝行を高く評価していることはわかる。わかるんだが、それは客には関係ないことである。だから、目立つ所にステッカーを貼ることもあるまいと思う。親孝行の人(自己申告)には、養老ビール(今もあるかしら)を半額にするとかというなら、ステッカーを貼ってもいいけど。
さらに、連想すると、新聞少年がいる。新聞配達で家計を助ける少年である。さらには親の介護をながく続ける少年少女を思いつく。りっぱなことで表彰ものである。思いつくのだが、親が死んでも届け出ず、年金をもながくもらいましたという年金詐取事件まで私の連想は広がる。
親孝行はなんとなくこそばゆい。へそ曲がりのせいか、ちょいと親不孝の方にずれていく。
ついでのひとこと
ラジオテキストでは、親孝行の演目として「二十四孝」「浜野矩随」などを挙げている。私の心に、まず浮かんだのは「しじみ売り」だった。鼠小僧ものである。
親不孝ものだと、若旦那シリーズがいくつも浮かんでくる。
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コメント
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養老の滝は庶民的な価格で飲める店として有名ですが、
最近は少なくなったのでしょうか。YOROビールなんて
いうのも出していましたね。あるとき、養老の滝は創価学会
系の企業だと聞いてから嫌いになりました。
もっとも国民の一割が学会員だというぐらいなので、
やたらには言えません。芸能人も学会人が多いようですが
たがいに利用しているところがあるのでしょう。
ユニクロ、TSUTAYA、HIS、伊藤園、デズニーランドなど、
学会の勢力はおそろしいですね。
いい人もいますが、基本的にナンミョーは嫌いです。
投稿: ripple | 2013年4月 8日 (月) 18時06分