あっけらかん ポカン、ケロリ、ガラン
ここ数回、辞書について採りあげた。今月、国語辞典づくりを描いた「舟を編む」が公開されることになったのでその記念にというつもりはさらさらない。たまたまである。今ひとつお付き合い願いたい。
見坊豪紀さんや何人かの雑談の中で「あっけらかん」の話題になったことを思い出した。私は黙って聴いているだけだったが、印象に残っている。
まず、『新明解国語辞典』を見てみると。
あっけらかん 〔何もすることがなくぼんやりしている意の「あけらかん」の強調形〕 (一)事の意外さに驚いて、口を開けてただぼんやりしている様子。 (二)(何らかの対応が必要なのに、傍の者があきれるほど、平然としている様子。「自分の失策なのに、当の本人は他人事のようにあっけらかんとしている。〔(二)は、誤用に基づく〕
別の表現をすると、(一)はポカンである。(二)はケロリである。わたしは(二)の意味で使うことが多い。(二)が誤用とは意外だが、そのあたりが議論の発端だったか。
見坊さんの『三省堂国語辞典』では三つの語釈を挙げている。ひとつは、ポカンである。もうひとつはケロリである。ここまでは同じ。もうひとつは「あけっぱなしでかくさないようす」である。アケッピロゲとでもなるのか。
あっけらかんから連想するのは江戸中期の戯作者・朱楽菅江(あけらかんこう)である。もちろんペンネームで、そう名乗ったのは、おそらく(二)の意味からきているのだろう。つまり江戸時代から、このことばはあった。
小学館の『日本国語大辞典』をみてみると、「あけらかん」の項で挙げているのは、ポカンと意味だけである。その強調形である「あっけらかん」の項で、(二)のケロリの意味がでてくる。さらに三番目の意味として、「その場所にあるべき物がなく、がらんとしているさまを表わす語」を挙げている。用例として「元旦の昼過ぎ、町はあっけらかんと、人通りも少なかった」(安住敦)。もうひとつ「とつぜん、出現した虹のながめは、あっけらかんと晴れ上がった空を背景に・・・」(野坂昭如)。
これはガランという意味があてはまる。『日国』では、5つに意味を分けているが、整理すると、ポカン、ケロリ、ガランに集約できる。
語源的には、空け、明けからきている。そこから、空間がある、空間が開ける(明ける)、呆ける(心に何もない、放心状態)といった意味に派生していった。
あっけらかんの「かん」は、漢であろう。正義漢、けろり漢など、おとこという意味をあらわす。空き、明らかな漢ということであろうが、ふと妙なことを思いついた。「あけ羅漢」ということもありうるのではないか。
あけっぴろげの羅漢さん。民間語源(フォークエチモロジー・学術的には正しくない)であるけれど、そう考えるのも面白い。
で、羅漢さんの写真を一枚。柿生ちかくの浄慶寺にある羅漢像である。
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