「天使の分け前」
先週に続いてアルテリオ映像館。今月はヴェネチアやカンヌで賞をとった作品が上映されている。小品だけど優秀作といった映画である。「天使の分け前」はスコットランドを舞台にしたヒューマンコメディ。チラシのイメージではお笑いたっぷりの映画かと思っていたが、そうでもなかった。ユーモラスなセリフや場面はあるものの、おふざけの映画ではなかった。
主人公・ロビーは傷害事件により逮捕される。懲役になるところを勤労奉仕(ソーシャル・ペイ・バックと聞こえたが正しいかどうかはわからない)を命じられる。ペンキ塗りや墓場の清掃がその活動である。恋人(実質、妻だが、その父親は結婚を許していない)との間に子供が生まれ、真面目に生きようとするが、町のワル連中は喧嘩を吹きかけてくる。相手をすれば懲役となってしまう。
勤労奉仕の仲間もでき、その指導者・ハリーも面倒見がよい。ウイスキー好きのハリーは彼らを蒸留所に連れていく。テイスティングするうちにロビーにウイスキーの良し悪しを見抜く才能があることがわかる。ワインならソムリエである。
あるとき、オークションにビンテージ物のウイスキーが出品されることになった。ロビーはこれを奪って金にする計画を思いつく。
イギリス映画では失業を扱った名作が多い。炭鉱や製鉄所の縮小・閉鎖を背景にした映画である。古くは「我が谷は緑なりき」があり、近年では「ブラス!」がその代表である。「天使の分け前」は炭鉱ものではないが、若者たちに職がないといったバックグラウンドは同様である。ロビーたち勤労奉仕仲間も職はなく、将来への漠たる不安を抱いている。
窃盗癖があったり酔っぱらいだったりどうしようもない落ちこぼれ連中だけれど、指導員のハリーは彼らを温かく導く。ハリーの役どころがこの映画の要である。観どころは、犯罪物語であっても誰も被害者にはならないところである。なぜそうなるのかは観てのお楽しみだが、タイトルがヒント。
「天使の分け前」(エンジェル・シェア)とは、ウイスキーを樽で熟成させると毎年2パーセントずつ量が減っていく。水分が蒸発するからで、その分、コクがでる。減った分を天使の取り分とか分け前という。
ついでのひとこと
イギリスの司法制度についてはまったく知らない。懲役の代わりに社会奉仕活動が命じられるのはよくあることなのだろうか。日本では未成年者に対し、まれにそうした判決があることは聞いたことがあるのだけれど・・・。
被害者と加害者が面談する制度もある。本映画でもロビーが暴行した相手やその家族と面談するシーンがある。被害者の痛みを理解せよという趣旨である。
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