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2013年7月22日 (月)

「風立ちぬ」  宮崎流

 

「風立ちぬ」を観てきた。多くの人がご覧になり、観客動員数は今年のトップになると思われる映画だから、内容についてはとくに言うこともあるまい。

観る前にぼんやり考えていたのは、主人公・堀越二郎の声である。庵野秀明がやる。声優ではない。「エヴァンゲリオン」の監督である。宮崎監督ご指名だそうだ。どんな声をしているのだろうか。
 ああ、ふつうじゃんというのが観ての感想。よく響くような声ではない。滑舌は悪くないが、抑揚が少なく、素人っぽい。ベテラン声優なら、感情をこめて発声するだろう。うまいのはいいけど、そういう声ではなく、抑制のきいた透明感のある声を宮崎監督は選んだのだろう。

今回の大震災と重ね合わせ、関東大震災や第二次大戦の空襲など悲惨なシーンが多く出てくると思っていたが、そうではなかった。思いがけずさらりとした映像であった。二郎と菜緒子の恋愛もさらりとしたもので情熱的ではない。結婚生活も淡々と描いている。
 声高に反戦だの平和を訴えるのではなく、抑制をきかせているところが宮崎流である。これは好感が持てる。唯一、反戦的なセリフがあるとしたら、クレソン大好きドイツ人が語る「日本は破裂する」ぐらいだろう。

途中、ホテルで、ドイツ人が映画「会議は踊る」の主題歌を歌うシーンがある。「唯一度だけ」。もちろんドイツ語で。80年も前の映画であるが、この曲がなければ、映画は忘れ去られていたと思う。映画の内容はほとんど忘れ、会議場の椅子が揺れているところと、この曲が歌われるシーン(アインマールという歌詞が耳に残る)だけは印象に残っている。名曲である。それを素人っぽくというより、へたくそに歌う。音痴ぶりには笑ってしまう。それも宮崎流なのだろう。

 アニメであるけれど、大人向きの作品である。子どもが観ても面白くないと思う。「ポニョ」とは違うからね。

 

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