志の輔らくご 「牡丹灯籠」
立川志の輔の独演会に行ってきた。本多劇場(下北沢)で毎年開かれている恒例の会である。昨年の演目は「大河への道 伊能忠敬物語」だった。その影響で、千葉の佐原まで遊びに行ったのを思い出す。今年は「牡丹灯籠」。
志の輔独演会のチケットをとるのは大変で、6連敗中だった。ぴあの先行抽せん、先行発売、初日申込など、ことごとくハズれていた。今回、ようやくゲットできた。でも、座席は後ろから三列目。前列の見やすい席に座っている連中はどうやって手に入れたのか。まさかフライング・ゲット(不正入手)じゃなかろうねと、やっかみの一つも言いたくなった。
三遊亭圓朝のこの演目は、お露さんの幽霊がカランコロンとやってくるところが有名だが、怪談というよりは仇討物語である。登場人物も多く、シェークスピアよりも複雑で、実際に全部やると延べ三十時間かかるという。
落語ではその一部をやるのが通例となっている。「お札はがし」と「栗橋宿」である。「お札はがし」は耳が腐るほど聴いた。「栗橋宿」は数回。その他のところは一切聴いたことはない。わたしを含め多くの人は「牡丹灯籠」の全体像を知らないのではないか。
志の輔はそこのところを配慮して、全体像を語る。全編ぎゅっとまとめて三時間ぐらいで演じる。志の輔得意ネタのひとつとなっているが、わたしが聴くのは今回が初めてである。
志の輔は浴衣姿で登場。「牡丹灯籠」の登場人物の名札をパネルに貼り付け、相関図をつくりながらあらすじを解説していく。なるほどそういう設定かとよくわかる。およそ一時間かけて物語の前半、「お札はがし」の前までを説明する。ここまでで、お露も新三郎も登場しない。つまり、よく聴く部分は、後半の始まりのということになる。
中入り後に、紋付袴姿で登場、ようやく落語となる。「お札はがし」から「栗橋宿」の場面となる。全体を俯瞰すると「お札はがし」登場するお露も新三郎も、あるいはお札をはがした伴蔵も本筋の物語からすると傍流であることがわかる。サイドストーリーの人物なのだ。本筋の人物は、お露の父親・平左衛門とその後妻のお国、そして平左衛門の家来・孝助である。
このあたりを説明するのはやっかいである。あらすじを読んでもすぐに腹にはまらない。筋は込み入っているし、圓朝のストーリー展開にも無理があるように思える。荒唐無稽なのだ。言ってみれば「あまちゃん」のアキの祖母もアイドルになりたくて東京に行ったことがあり、そのとき子を産んでいて、実はそれが太巻だったぐらいの展開となる物語なのである。そのぐらい複雑であるというたとえであって「あまちゃん」がこうなるというわけではないですよ、念のため。
志の輔らくごは、そのあたりをうまくまとめている。笑いも折り込み、大団円へとつなげている。圓朝のエンディングの後、ちょっとしたエピソードをつけ加えて志の輔の「牡丹灯籠」は終わる。このあたりのまとめ方はさすが志の輔。みごとである。
今月末から来月にかけていくつかの落語会を予定している。夏だから怪談噺もある。定番の「お札はがし」と「豊志賀の死」(「真景累ヶ淵」の一部)、そのどちらかは聴くことになるだろう。
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