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2013年11月19日 (火)

冬のコオロギ 静寂の響き

 

 十年以上前のことである。ちょうど今ごろの季節。深夜、帰宅した。その途中、大通りをはずれると騒音がやんだ。生活音も途絶えていた。

 脇の公園の草むらから虫の鳴く声が聞こえてきた。コウロギがジジジーっと、か細い声で鳴いている。晩秋というより、季節は冬に入っている。まだ、冬ごもりもせず、鳴いているのか。

 家に帰ると、鳴き声のことなどすっかり忘れた。テレビも電気も消し、床につく。すると、あの鳴き声が聞こえてくる。えっ、家の中にもコオロギがいる、と一瞬思ったが、そうではないことに気づいた。

ひょっとすると耳鳴りではないか。ジジジーーーと静かに聞こえる音は耳の中で鳴っている。

 それ以来、耳鳴りが気になるようになった。気にすれば気にするほど音は大きく感じるけれど、気にしなければ、耳鳴りは聞こえない。騒音や生活音が耳鳴りをかき消している。

 ふだんは気にはしないが、たまに耳鳴りが大きくなることがあった。耳鼻科に行った。「コオロギではなくセミが鳴くようになった」とうったえたら看護婦が笑ってくれた。医師の判断は、耳鳴りとはそういうものでほっておくしかない、であった。聴力も正常域である。何か別の病気の疑いはないのかと思うが、そうでもないらしい。後に、脳の検査もしたのだが、問題なし。「きれいな脳です」と言われた。「きれいな脳」ですって。ちょっとうれしい。

 

 サイモンとガーファンクルに「サウンド・オブ・サイレンス」という名曲がある。直訳すると、沈黙の音。それでは無粋だ。味も素っ気もない。「静寂の響き」とでも訳したほうがよい。「しじまのささやき」でもよい。詩は難解である。よくわからない。

 ひょっと思いついた。サウンド・オブ・サイレンスとは耳鳴りのことではないだろうか。突拍子もない見解かもしれないけれど、静寂の中で聞こえてくるのは「しーんと静まりかえった」のシーンというオノマトペである。それが耳鳴りであってもおかしくない。

 サウンド・オブ・サイレンスの歌詞をみてみると不思議なことがわかる。sound of silence が繰り返し何回も出てくるが、最後はsounds と複数形になる。

最後のsoundsは、コオロギやセミなどさまざまな音の響きをを表現したものではないかと、私は勝手に解釈している。

 

 耳鳴りは続いている。いま、この文を書きながらも、耳の奥でコオロギが鳴いている。単数形である。不快を感じさせるほどのものではない。ま、慣れなんでしょうね。

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