「年忘れ 市馬落語集」 今年の締めくくり
二日続けての落語会である。
恒例の「市馬落語集」で思い出すのは、三年前の九段会館である。古色蒼然とした大ホールで、こりゃ、大地震が来たらイッパツだなと感じた。その危惧が三か月もたたないうちに現実となった。3.11では天井が崩落し、死傷者がでた。
談志がゲスト出演した。登場したときの客席からの拍手がすごかった。声はまだ出ていたが、トークだけだった。その翌年に亡くなった。
今回は、新宿文化センターの大ホール(収容人数1800人)である。新宿駅からはそれほど遠いとは思っていなかったが、ずいぶん離れている。地下鉄・東新宿に近いが会場までは歩いた。
さて、この会、客はもちろん市馬の落語を聴きに来るのだが、もう一つのお目当ては懐メロである。後半は、市馬がフルバンドで昭和歌謡を歌う。これがたのしいのだ。客層は圧倒的に高齢者が多い。市馬の昭和歌謡を聴かないと年を超す気にならないという人もいる。テレビではやらないので、知らない人も多いと思うが、こんなイベントもあるのだ。入場料もいつもより高めの4500円。
前半は落語。メンバーと演目を紹介しておく。
柳亭市馬 三十石
春風亭一之輔 浮世床
三遊亭兼好 宗論
柳家三三 粗忽の釘
豪華メンバー。一之輔、兼好、三三は、次代の落語界を背負うことが約束されたような実力若手噺家である。
市馬は船頭唄をたっぷりやって会場を盛り上げる。陶然として聴く。すばらしい芸である。これに乗せられたかのように、後の三人もテンションが高かった。アドリブのギャグもなめらかに飛び出して、いつも以上に見事だった。こちらもたっぷり笑わせてもらった。とりわけ兼好が弾けていた。
仲入後は歌謡ショー。「昭和歌謡大全集」である。
第一景は東海林太郎の世界。もちろん丸いめがね、燕尾服姿で登場。「国境の南」「旅笠道中」「上海の街角で」「赤城の子守唄」。
第二景はデュエットソング。恩田えり(いつもはお囃子で舞台には上がらない)とのデュエット。「うちの女房にゃ髭がある」「もしも月給が上がったら」「二人は若い」。
第三景は伊藤久夫、ティック・ミネなどのナツメロ。「暁に祈る」「女の階級」「愛の小窓」「誰か故郷を想わざる」。
第四景は、今年亡くなった田端義夫の歌。「海のジプシー」「梅と兵隊」「玄海ブルース」。
曲名は必死にメモしたのではなく、当日のチラシからの転載である。マニアックな曲も入っている。これらの曲をほとんど知っているのは、後期高齢者の世代である。
フルバンドをバックに市馬は気持ちよさそうに歌う。フルバンドの中には、おぼん(漫才師)がいる。林家正蔵もトランペットを吹いている。太ったロイドめがねの男がいると思っていたら正蔵だった。正蔵は多才である。
途中、志らくが普段着で登場して「東京の空青い空」を歌って帰って行った。
あっと言う間にフィナーレとなり、「東京ラブソディー」「東京五輪音頭」。
ということで、落語も歌謡ショーもよかった。堪能した。
今年の落語は、この会で聴き納めである。いい締めくくりとなった。
写真は今回のチラシ。
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