「永遠の0」 永遠のうそ
年末の映画でさして観たいものはない。しいてあげれば「永遠の0」ぐらいか。感動を売りものにするような映画はパスしたいのだが、暇だから観てみることにした。
原作はベストセラーである。でも読んでない。
祖母の葬儀で、健太郎(三浦春馬)は祖父と血のつながりはなく、実の祖父(岡田准一)がいたことを知る。姉とともに、特攻隊員だったという祖父のことを調べ始める。戦友たちを訪ね歩くが、祖父の評判は芳しいものではなかった。優れたパイロット技術をもっていたが、戦闘をせず命を惜しんだ、卑怯、臆病者という散々なものであった。
一方で、祖父に、生きろ、命を惜しめ、というメッセージを強く感じとっていた人も現れた。
戦闘シーンが素晴らしい。航空母艦にゼロ戦が発着艦する場面でこれほど鮮明で迫力のある画面は観たことがない。CG技術の成果である。この画面を観るだけでもこの映画の価値がある。
ただし、ストーリーとなると、いくつか引っかかるところがある。
ネタバレになってしまうので、映画を観た人しかわからないような範囲で書く。(観てない人には何のことかさっぱりわからないと思うが)
松乃(井上真生、健太郎の祖母役)が戦後訪ねてきた特攻仲間を「帰ってください」と追い返してしまうシーンがある。夫が戦死して別の人間が生き残ったのは面白くないということなのだろうが、戦友がせっかく訪ねてきたのだ。こういう言い方はない。不自然に映る。もっと別の表現があってもよい。
最後になって、義理の祖父(夏八木勲)がひとつの事実を告白する。今頃言い出すのは変。祖母との約束があったからかもしれないけれど、もっと早く話しておいてもいいし、ラストメッセージ(遺言)として残しておくぐらいに留めておいた方がよいように思う。
それじゃあ、ドラマにならないという意見もあろう。でも、くさい。火曜サスペンスのラストで犯人が崖っぷちなどで長々と告白するシーンがある。あれを連想してしまうのだ。原作がどうなっているか知らないけど、ちょっと解せない。脚本は安っぽい。
ということだが、涙を流している観客は多かった。映画製作としては成功したのだろうね。
ついでのひとこと
それにしても、夏八木勲。亡くなってからロードショー公開された映画を何本も観た。この映画のほか、「そして父になる」「終戦のエンペラー」。まだあるそうだ。クランクアップから公開まで時間があるからだろうが、それにしても、ラストスパートの晩年であった。
さらにひとこと
エンディングに桑田佳祐の「蛍」が流れる。この映画には似合わない。
ここは吉田拓郎にすべきじゃなかったか。「永遠の嘘をついてくれ」。特に三番の歌詞。中島みゆきでもいいけど。
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