「不毛地帯」 星は何でも知っている
川崎市民ミュージアムは土日、映画を上映している。今月は昨年亡くなった山崎豊子の特集である。山崎豊子の小説はいくつも映画化されている。テレビ化されたものを含めると随分の数になる。それだけ、魅力的な小説を生み出してきたということであろう。
今回、どんな作品が上映されるかというと、「女の勲章」「女系家族」「沈まぬ太陽」「横堀川」「白い巨塔」「不毛地帯」「華麗なる一族」「暖簾」「花のれん」である。名作ぞろいである。
我が家から川崎ミュージアムまではけっこう時間がかかる。土日とはいえ、観るチャンスは限られている。昨日は他に予定もなかったので出かけた。「不毛地帯」を観た。
瀬島龍三をモデルにしたといわれる。陸軍参謀であった壱岐(仲代達矢)がシベリア抑留となり、十一年後に帰国する。商社に入り、折からの航空自衛隊の次期戦闘機売り込み合戦の渦中に身を投じていく。原作はこの後、中東での石油発掘の話となるが、映画は原作の前半部分、戦闘機売り込みの部分が描かれる。
登場する俳優がすごい。四十年近く前の映画だから、鬼籍に入った人がほとんどだが、名優が並ぶ。田宮二郎、丹波哲郎、山形勲、神山繁、八千草薫、大滝秀治、高橋悦史、小沢栄太郎、小松方正、加藤嘉、秋吉久美子・・・。ちょい役でも存在感がある。
名優は声がいい。仲代達矢以下、声の響きがなんともよい。美声、だみ声を問わず、グワンと響いてくる。とりわけ印象に残ったのは社長役の山形勲である。役者は見てくれよりも声だな、と感じ入った。
ところで、瀬島龍三がモデルというが、実態とは異なる。瀬島龍三は毀誉褒貶半ばする。参謀時代には重大な電報を握りつぶしたとか、シベリア抑留をめぐっての真相や映画で描かれる戦闘機売り込みについても肝心な部分は語らなかった。仲代演じる壱岐とは違うタイプの人間だと頭に入れておいた方がよい。フィクションだから当たり前なんだけどね。
昭和三十三年から数年が描かれる。映画の中で平尾昌晃の「星は何でも知っている」が流れる。この歌がはやっていた時代の話である。
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