あったか落語 その六 前座もいい
寒い中、「あったか落語。ぬくぬく」(成城ホール)に行ってきた。今回が6回目、これまで欠かさず聴いている。
あたたか系の三人であるが、芸風、雰囲気はすこしずつ違う。瀧川鯉昇は、こたつに入っているようなじんわりしたイメージがある。柳亭市馬はポカポカ系。陽だまりの中にいるようである。三遊亭兼好は、パチパチ弾けるたき火にあたっているような感じがする。
今回の演目はつぎのとおり。
瀧川鯉昇 武助馬
柳亭市馬 厩火事
三遊亭兼好 明烏
「武助馬」はあまり演じられることがない噺だが、鯉昇の得意ネタのひとつ。芝居で馬の後脚の役がついた武助が、前脚役の男に放屁をされたりするこっけいな物語で、後ろ足なのにヒヒーンといなないてオチにつながる。まことにばかばかしい噺で、これを鯉昇がやるとさらにおかしみが広がる。
今回は、前座について触れておく。開口一番は、市馬の弟子、柳亭市助が務めた。このところ、同じ前座にぶつかることが多い。真打よりも前座の方が少ないから、そういう事態になる。演目は「転失気」だった。前座噺の中でも演じられることが多い演目である。
知ったかぶりの和尚が、医者から「てんしきはあるか」と問われ、その意味(おなら)を知らないとも言えず、あとで寺の小僧に聞きにいかせる。小僧は、転失気がおならと知るが、いたずら心を発揮して盃だと和尚にウソの報告することからトンチンカンな展開となっていく噺である。
市助はそつなくきちんと演じた。実は先だっての談笑の会の開口一番もこの噺だった。前座噺も限られるので同じ演目が続くことがある。実際、「牛ほめ」を三度続けて聴いたことがある。
で、談笑の会の開口一番は、立川笑二だった。この「転失気」がおもしろかった。転失気の意味を盃ではなく、「元気」に変えていた。改作である。ストーリー展開がうまくできていて、見事な改作になっていた。さすが改作魂・談笑の弟子である。得意ネタになる。
市助も笑二も将来が楽しみな前座ということで、今回の締めとしたい。
あったか系を聴いたせいか、帰り道はそれほど寒さを感じなかった。
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