鳥取連続不審死事件 きょう控訴審でも死刑
首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗被告は先だっての二審でも死刑判決を受けた。裁判内容よりも服装の方が話題となり、劇場型の裁判となっている。この日は赤いチェック柄のバーバリーのパジャマ姿だったという。パジャマ姿ってなによ。ジャージのようなものか。被告いわく、弁護士がバーバリーのコートだったのでお揃いにした。(週刊文春)
ブログも始めており、その中で、男性への熱い思いを綴っている(見てないけど)。まあ、恋なんてどこでもころがっているから、勝手にどうぞ、と言うしかないが、その熱い思いの相手は、ジャーナリストの青木理さんだそうだ。青木さんにすれば苦笑するしかないような話である。
青木理さんは、もうひとつの連続不審死事件を追っかけている。鳥取で起きた六人の不審死を巡る事件である。昨年末『誘蛾灯 鳥取連続不審死事件』(講談社)を上梓している。
木嶋被告と比べてこちらは地味。五人の子持ち中年女・井上美由紀が被告である。
鳥取の寂れたスナックの客が次々と不審死する。被告は美人でもなく、ふくよかというか、スナックで働くただの太めの子持女である。客と性的関係を結び、子供をだしにして金をせびり取っていく。その中には新聞記者や警察官もいた。まともな勤め人が次々と井上被告の手管に籠絡され、借金をし勤めを辞めることになった。あげくの果ての死。井上被告が殺したかどうかは不明だが、スナックの客6人が不審な死に方をしている。
この本はおもしろい。鳥取という弱小県の特質をうまく背景に描き込んでいるところが秀逸である。人口六十万人弱。軽自動車の保有率は都道府県でトップ。公共交通機関が発達しておらず、共稼ぎでないと暮らしていけないという経済事情がある。カレールウ、冷凍食品の購入率もトップ。調理に手間をかける時間がないからだ。
出会いの場となったのは、地方都市にある典型的なカラオケスナックである。客の中には生活保護を受ける困窮者もいる。地方の衰退ぶりと重ね合わせると興味深い世相が読み取れる。
外野からすれば、なんでこんな女とできちゃって金をむしりとられることになったのかさっぱりわからないが、まあ、知らぬ間につけ込まれていったんだろうねと言うしかない。
ほら、アナタ、スナックの中年女とできちゃって、相手から妊娠した、金がいると言われたらどうする? まあ、うまく逃れることを考えるのだろうが、蜘蛛の糸に絡まれたように金を工面することもあるかもしれない。井上被告は、相手につけ込むのがうまい女だった。
一審では死刑判決がでている。きょう控訴審でも死刑の判決であった。青木理のルポは、検察側の強引な推論と脆弱な証拠を批判する。あわせて弁護側のやる気のなさを指摘する。
木嶋被告の事件と比べると地味である。首都圏の事件が日向ならこちらは日陰。ひまわりと月見草。首都圏と疲弊する地方都市。そういう図式で眺めると、この二つの裁判は関心をそそる。
それにしても、木嶋被告、つぎはどんな服装で出廷するのか。劇場型裁判を演出する被告の奥底を覗いてみたい。一方で、鳥取。最高裁でどんでん返しのような証言が飛び出す予感がする。
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