「新刊談笑」 掘り起こしオリジナル落語
昨夜は立川談笑の「新刊談笑」に行ってきた。
この会、古典ではなく、新作の落語を演る。新作というとちょっと語弊がある。十年以上も前につくったものを新作と呼んでいいのかどうか疑問もあるが、古典噺以外は新作と呼ぶようになっている。オリジナルとか創作と呼んだ方がよいと思う。
今回の演目は、「原発息子」「猿のゆめ」「「親子の釣り」。
「原発息子」は東電に入社した若者が原発の線量の高い職場で働く話。というと福島第一と思われるかもしれないが、事故後ではなく、3.11以前に創作したものである。事故前はけっこう演っていたそうだが、事故後は封印してきた。3年たってようやく解禁したそうだ。リアリティがありすぎるというか、時代が落語に追いついてきたともいえる。談笑の創造力を感じさせる噺である。
「猿の夢」は人間ドックの再検でDNAを調べたところ、実はサルだと宣告された男の話。こういうSFはよくある。それを落語らしい噺に仕立てている。夢と交えたシュールな世界が描かれる。「芝浜」「疝気の虫」を彷彿させるような内容となっている。
「親子の釣り」は親子で磯釣りに出かける話。親子で出かけるといえば落語には「初天神」がある。あれと雰囲気が似ている。ただし、あれよりは毒気がきつい。土座衛門の魚拓(人拓?)をとるのがオチとなっている。
この噺は前座時代に作った噺だそうだ。才気あふれるというか、談笑らしい理屈(立川こしらは、談笑は理屈っぽいと批評している)を感じさせる。
古典をいじって古典よりおもしろいというのが談笑の魅力である。もちろん古典を古典らしくやっても上手いが、どんな風な演出が飛び出すかわからないところが談笑ワールドであって、これはライブでないと味わえない。談笑の改作魂に、今後も期待したい。
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