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2014年5月 7日 (水)

チャレンジ  ヒトの目は過つ

  

 ときどきメジャーリーグの中継を見ている。

 昨年と違うのはビデオ判定である。ホームラン判定以外にも用いられるようになった。

 ランナーが一塁に駆け込む。アウトかセーフかきわどい。判定はセーフ。相手チームの監督は抗議し、ビデオ判定を要求する。これを「チャレンジ」という。ビデオ審査が行われる。その結果、判定はくつがえってアウトになる。

 塁審の判定がくつがえされるケースはけっこうある。プロの塁審でも誤審は多いということか。

 この判定ミス、ある程度致し方ない。人間の視覚は錯覚が多い。というより、人間の視覚は錯覚で作られているといってよい。脳科学者からそんな見解を聴いたことがある。

 左右の目でとらえたものが瞬時に脳に送られ映像化される。その映像は実際を正確に捉えたものではなく、抽象化され、デフォルメ(歪曲)されたものになっている。

 突然現れた不可解なものを驚いて化け物だと認識することがある。しかし、よく見ると、オバケではなく、実は枯れ尾花だったというアレである。

 サッカーのオフサイド判定で説明するとわかりやすい。オフサイドかどうかのきわどいシーンをスロービデオで見ると、線審があきらかに判断ミスを犯していることが少なくない。

 線審は蹴り出した瞬間とオフサイドラインを同時に見てオフサイドかどうかを判断する。離れた場所での動き、つまり位置のずれ、時間のずれを瞬時に脳の中で修正処理する。デフォルメが介在する。しかも、一方からだけの視点であり、多方面から見るビデオの映像とは正確さでは差がでるのは当然と言える。審判の判断に間違いがあるのは致し方ない。

 誤審であるけれど、サッカーの場合、問題視されることは少ない。抗議してもあっさり引き下がる。これでいいのだろうね。

 メジャーリーグでは、より正確さを追求するために、ビデオ審査を導入した。これもひとつの見識である。

 

 ビデオ判定を要求する権利をチャレンジ権という。テニスでも同様なものがある。チャレンジというと、なにかに挑戦しているようで大げさのようにも思われるが、辞書を引いてみると、チャレンジには異議申し立てという意味がある。これである。

 このアウトセーフのビデオ判定、日本のプロ野球でも導入されるかどうかはわからない。地方球場ではビデオ設備が整っていない。すぐには無理だろう。

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