無料ブログはココログ

« 「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」  コーエン兄弟の作風 | トップページ |  萬橘馬るこ プラスワン 今回は一之輔 »

2014年6月10日 (火)

『満月の道』 長い道のり

 宮本輝のライフワークとでもいうべき『流転の海』の最新刊である。シリーズ第七部になる。あと二冊、第九部で完結するという。ここまでで30年以上たっている。ゴールは見えてきたが、あと数年はかかるということだ。

 主人公・松坂熊吾に子ができたのが50歳のとき。この子・伸仁が成人するまでは死なないと決意する。あれから15年ほど経過した昭和36年。伸仁は中三。来年は高校生になる。

 熊吾が始めた中古車販売の事業はうまくいった。折からの好景気もあり、仕入れた車はたちまち売れるという状況で、熊吾も昔の勢いを取り戻しつつある。妻の房江はモータープールの賄いなどでゆっくり休む暇もない。不眠と疲労を酒で紛らわす半面、暮らしにはようやくゆとりを感じるようになった。病弱だった伸仁は、ぼんやりしたところがあるものの柔道の練習に精を出すなどして体力もついてきた。身長も熊吾を追い越すほどになった。

 高度成長に沿うように松坂一家も穏やかな生活が続くように思われたが、トラブルが待ちかまえている。熊吾はかつて関係があった博美と再会するが、やくざがまとわりついていた。なけなしの金を使ってこれを救う。事業はうまくいっているが、社員の不正が発覚する。熊吾はよくよく他人にだまされる運命にある。裏切られてばかりいる。しかし熊吾は寛容であって、それを厳しく追及することはない。寛容というより、それが運命とばかりあきらめている節がある。

 

 タイトルの「満月の道」とは、房江が城崎で蕎麦屋を始めた麻衣子のもとを訪れたとき、橋で見た満月からきている。橋の先が一本の道のようになっていた。

 「このあと、房江にはこれから先、じつに苦しみの多い時期が到来する」と、著者があとがきで書いている。えっ、苦しみの多い時期なの!

戦後のどさくさ、という言い方がある。どさくさの中で浮沈がある。自分で蒔いた種もあるが、他人にだまされたり、事件に巻き込まれたりする人生がある。どさくさをかろうじて生き延び、ようやく安堵した生活がはじまるかと思いきや。思い通りにはいかないのか。

みな幸せに暮らしてほしいと読者は願っているのだが・・・

« 「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」  コーエン兄弟の作風 | トップページ |  萬橘馬るこ プラスワン 今回は一之輔 »

読書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『満月の道』 長い道のり:

« 「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」  コーエン兄弟の作風 | トップページ |  萬橘馬るこ プラスワン 今回は一之輔 »