『破門』 てなもんやピカレスク・ロマン
黒川博行の『破門』が直木賞候補になっている。
黒川作品は割と気に入っている。今回の候補作は、桑原・二宮の迷コンビが登場する「疫病神シリーズ」の5作目である。
暴力団組織の片隅にいる桑原が、しょぼい建設コンサルタントの二宮を引き連れ、詐欺にあったやくざ組織からの頼みで、奪われた金とか美術品を取り返そうとするのがこのシリーズのパターンである。今回の『破門』は映画制作費を持ち逃げした男をマカオにまで追いかけるというストーリーである。
このシリーズのどこがおもしろいかというと、桑原と二宮の関西どつき漫才のようなボケとツッコミである。二人のやりとりが抱腹絶倒。桑原は横山やすしを連想していただければよい。ただしもっと大柄で凶暴。二宮はひ弱で、桑原のぱしり、引きずり回される役どころである。
もっとわかりやすい例がある。落語の「らくだ」を思い出していただければよい。丁ノ目の半次(らくだの兄弟分)とくず屋。半次は乱暴者で、くず屋をこき使う。くず屋は半次を恐れ、しぶしぶ使いっ走りをさせられる。桑原が半次で、二宮がくず屋である。
桑原の凶暴で、ときにとぼけた啖呵が心地よい。たとえば、こんなセリフ。
「おまえはいつでもそうなんや。ひといちばい欲深いくせにパンツのゴムがゆるい」
「おまえのスポンジ頭が羨ましいのう。わしもそんなふうに生きてみたいわ」
と言いながらも、せびられるままに二宮に金を与える。凶暴だけではない。
このシリーズでは北朝鮮に渡航する『国境』がいちばんおもしろい。ま、好みだけどね。
さて、直木賞であるが、これが6度目の候補とか。へー、万年候補じゃないか。今回、みごと受賞となるか、そうあってもらいたいが、はたして・・・。
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