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2014年6月14日 (土)

『俳魁』 2013年を描く

 

 三田完の小説を最初に読んだのは、NHKの名物アナウンサー・中西龍を描いた『当マイクロフォン』だった。なかなかおもしろかった。以後何冊か読んでいる。

『俳魁』(角川書店)は最新刊。俳句界を描いた小説である。

あらすじを紹介しておくと、大震災があった2013年3月、作家の私(大友玄)は、俳句雑誌にエッセイを連載していていた縁で、俳句界の重鎮、窪嶋鴻海の文化功労賞の祝賀会の招待状を受け取る。窪嶋との面識はなかったが、亡くなった母が窪嶋が主宰する俳句結社にいたことを知る。母の遺品から、母と窪嶋のツーショット写真も見つける。かなり近しい仲だったようだ。大友は祝賀会に出席し、以降、窪嶋との付き合いが始まる。句会にも誘われる。

 俳句雑誌は、その秋、大友と窪嶋の三陸海岸への旅の企画を提案する。石巻は窪嶋の故郷であり、震災後の三陸海岸を訪ねるというのはタイムリーな企画でもあった。窪嶋は了解する。大友は母と窪嶋の関係を知りたいということもあり、同行することにした。芭蕉と曾良が旅した跡をたどる旅でもあった。

 俳句がたくさん出てくる。句会の様子が詳しく描かれているから、そこでの俳句もふんだん載せられている。句の解説など興味深い。しろうとでもわかりやすい。著者も俳句をなす。ここで出てくる俳句はすべて著者がつくったものらしい。

 震災からほぼ一年間を描いている。どんな年だったか、社会の動きも並行して書かれている。たとえば11月には立川談志が亡くなっている。大友はラジオニュースでそれを知る。とっさに一句浮かんだ。 

悪態も消えてさみしき小春かな 

 

 俳句に関心ある人にはお薦めである。私のように俳句とは無縁の人間が読んでもおもしろい。

 三田完は流行作家ではない。大衆受けはしないようだが、中高年には受けると思う。まだ単行本になっていないが、小沢昭一の生前と死後を描いたノンフィクションがある。いずれ単行本になると思う。これは間違いなく話題になるだろう。

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