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2014年7月17日 (木)

兼好のおとぼけ爆笑ワールド

 きのう、三遊亭兼好独演会に行ってきた。「この落語家を聴け!」シリーズの第五回である。
兼好落語はひたすら明るい。しんみりした人情噺も底抜けに明るい噺にしてしまう。業を肯定せず、滑稽を全面に押し出す。同じ爆笑系でも権太楼などとは違って、底抜けに軽快で明るい。おとぼけが可笑しい。
 評論家の広瀬和生さんは、「毎日でも聴きたい噺家」のベストテンを挙げろといえば、その上位に兼好は入ると書いている。同感である。
 兼好は好楽の弟子、円楽一門である。弱小団体であるけれど、いい若手噺家がいる。兼好と萬橘。立川流が四天王に続く人材が出ていない(異論はあろうが)のに比し、円楽党は活きのいい若手が育っている。

 今回の演目
 三遊亭わん丈  八九升
 三遊亭兼好   鈴ヶ森
 三遊亭兼好   応挙の幽霊
 広瀬和生    インタビュー  

  開口一番は三遊亭わん丈。三遊亭だが同じ三遊亭でも兼好とは所属団体が違う。落語協会の円丈の弟子。円丈は円生の弟子で、のちに袂を分かった。円楽一門は円生直系だから、円丈の弟子が円楽党の開口一番に登場するのは珍しい。かどうかはよくわからないけれど、わん丈が前座でも評価されているということだろう。
 演目の「八九升」は初めて聴いた。耳の遠い人を揶揄するような差別用語が出てくるので高座に掛かることは少なくなっていると、わん丈は説明していた。そうなんだろうな。
 さて、兼好さん。「鈴ヶ森」はまぬけな泥棒(正確には強盗だが)の噺。最近は一之輔がよくやっているが、その一之輔に教わったという。ばかばかしいのは、泥棒がしゃがむと尻にタケノコが突き刺さるシーンである。一之輔は大仰にやるが、兼好はおとなしくやる。そのかわり、尻をあげると突き刺さったタケノコが一緒にくっついてくるように変えていた。ちょっとした工夫である。これが兼好らしく、とぼけた感じが出ていて愉快だった。
「応挙の幽霊」は噺としては知っていたが、聴くのは初めて。応挙の作という幽霊の掛け軸を勧めると買い手が現れた。内金をもらって骨董屋はその夜、祝いの一杯を始める。酔ううちに、掛け軸から幽霊が出てきて一緒に呑むことになるという噺である。元ネタがどのようであるかは知らないけれど、兼好は明るい幽霊に仕立てている。 入江たか子(かつて、化け猫もので一世を風靡した女優。ちょっと古いか)ではなく、吉高由里子風のぶりっ子幽霊。しぐさがなんともかわいらしい。

 ということで、兼好のおとぼけ爆笑ワールド、けっこうでした。  

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