市馬 船頭舟唄をたっぷり
国立演芸場、七月中席のトリ(主任)は、落語協会会長に就任したばかりの柳亭市馬である。その祝いというわけではないが、きのうの日曜、永田町まで聴きに行った。
市馬については当ブログで何度も採り上げてきた。市馬の落語は大相撲でいうと白鵬、横綱相撲の堂々たる芸であると書いてきた。芸だけでなく役職も落語協会のトップとなった。ますます王道をいく芸を見せてくれるものと期待している。
中席の演者と演目を挙げておく。
柳亭市助 狸の恩返し
柳家小せん 新聞記事
江戸家小猫 ものまね
柳家小のぶ 火焔太鼓
柳家小里ん 三人兄弟
三遊亭丈二 牛ほめ
五明樓玉の輔 宮戸川(上)
柳家小菊 俗曲
柳亭市馬 三十石
常設の寄席には滅多に行かない。ほとんどがホール落語である。マジック、漫才、ものまねなど色物をみる機会は少ないので、たまにみるのもよい。
落語では、小のぶを初めて聴いた。言っちゃわるいがぼろぼろの爺さん。八十をたっぷり過ぎていると思っていたら、後で調べてみると七七歳だった。老けている。演目の「火焔太鼓」を大迎に、滑稽に演じた。
年老いた噺家だとこちらが緊張する。いつセリフを忘れて立ち往生するのではないかとヒヤヒヤする。そんなこともなく、いや、一箇所、瞬間、間が空く場面があったけど、無事、乗り切った。芸は老けてはいない。
丈二は橘家圓十郎の代演。新作落語をやるのかと思っていたら、オーソドックスに「牛ほめ」だった。
丈二は落語は上手いとはいえない。変化球で勝負する。その持ち味はわるくない。立川こしらと共通するキャラをもっている。たまには聴きたい落語家である。
丈二と違って、玉の輔は実力派である。といっても重厚ではない。芸風は明るく軽い。今回の「宮戸川」も軽快にやった。
で、トリの市馬師匠。なにをやるのか、夏だから「青菜」「船徳」、あるいは怪談ものかと思っていたら、「三十石」だった。なるほど、船下りの噺である。何回か聴いている。得意の喉が披露できる得意ネタのひとつである。
伏見から大阪まで、夜、船で下るというただそれだけで、これといったストーリーはない。前半に乗客名簿をとるシーンがある。これがでたらめで、笑わせる。大看板の噺家の本名が何人かでてくる。並河益義(先代文楽)とか松岡克由(談志)。後半は、乗船後、船中のくだりとなる。
市馬バージョンは船頭唄をたっぷり。ギッチラギッチラ櫓をこぎながら船頭は気持ちよさそうに歌う。船がゆっくり進んでいる情景が浮かんでくる。さすがの芸である。けっこうでした。
永田町は日曜の昼間は人がいない。演芸場も半分ほどの入り。ちょっとさみしい。
« 「ブルージャスミン」 シリアスな転落物語だけど・・ | トップページ | 兼好のおとぼけ爆笑ワールド »
「落語」カテゴリの記事
- 生田寄席 文菊(2024.09.05)
- 喬太郎・白酒・一之輔三人会(2024.08.30)
- 「国本武春の丹波浪曲道中記」(2024.07.29)
- 鶴川寄席 扇辰・兼好二人会(2024.07.21)
- 「八起寄席」 小間物屋政談(2024.07.17)
コメント