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2014年7月14日 (月)

市馬 船頭舟唄をたっぷり

  国立演芸場、七月中席のトリ(主任)は、落語協会会長に就任したばかりの柳亭市馬である。その祝いというわけではないが、きのうの日曜、永田町まで聴きに行った。
 市馬については当ブログで何度も採り上げてきた。市馬の落語は大相撲でいうと白鵬、横綱相撲の堂々たる芸であると書いてきた。芸だけでなく役職も落語協会のトップとなった。ますます王道をいく芸を見せてくれるものと期待している。

 中席の演者と演目を挙げておく。
 柳亭市助    狸の恩返し
柳家小せん   新聞記事
 江戸家小猫   ものまね
 柳家小のぶ   火焔太鼓
 柳家小里ん   三人兄弟
 三遊亭丈二   牛ほめ  
  五明樓玉の輔  宮戸川(上)
 柳家小菊     俗曲  
  柳亭市馬    三十石

 常設の寄席には滅多に行かない。ほとんどがホール落語である。マジック、漫才、ものまねなど色物をみる機会は少ないので、たまにみるのもよい。
 落語では、小のぶを初めて聴いた。言っちゃわるいがぼろぼろの爺さん。八十をたっぷり過ぎていると思っていたら、後で調べてみると七七歳だった。老けている。演目の「火焔太鼓」を大迎に、滑稽に演じた。 年老いた噺家だとこちらが緊張する。いつセリフを忘れて立ち往生するのではないかとヒヤヒヤする。そんなこともなく、いや、一箇所、瞬間、間が空く場面があったけど、無事、乗り切った。芸は老けてはいない。
 丈二は橘家圓十郎の代演。新作落語をやるのかと思っていたら、オーソドックスに「牛ほめ」だった。  丈二は落語は上手いとはいえない。変化球で勝負する。その持ち味はわるくない。立川こしらと共通するキャラをもっている。たまには聴きたい落語家である。
 丈二と違って、玉の輔は実力派である。といっても重厚ではない。芸風は明るく軽い。今回の「宮戸川」も軽快にやった。

 で、トリの市馬師匠。なにをやるのか、夏だから「青菜」「船徳」、あるいは怪談ものかと思っていたら、「三十石」だった。なるほど、船下りの噺である。何回か聴いている。得意の喉が披露できる得意ネタのひとつである。
 伏見から大阪まで、夜、船で下るというただそれだけで、これといったストーリーはない。前半に乗客名簿をとるシーンがある。これがでたらめで、笑わせる。大看板の噺家の本名が何人かでてくる。並河益義(先代文楽)とか松岡克由(談志)。後半は、乗船後、船中のくだりとなる。 市馬バージョンは船頭唄をたっぷり。ギッチラギッチラ櫓をこぎながら船頭は気持ちよさそうに歌う。船がゆっくり進んでいる情景が浮かんでくる。さすがの芸である。けっこうでした。
 永田町は日曜の昼間は人がいない。演芸場も半分ほどの入り。ちょっとさみしい。

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