ルヴィッチと珍道中 シネマヴェーラ
久しぶりにシネマヴェーラ(渋谷)で映画を観た。7月から8月にかけては「映画史上の名作11」を特集している。古い映画の掘り起こしである。
今回観たのは「陽気な巴里っ子」と「アフリカ珍道中」。「陽気な巴里っ子」は1926年の制作、90年近く前のサイレント映画である。監督はルヴィッチ。映画創成期の名監督である。ウイットに富んだユーモアドラマを多く作った。ビリー・ワイルダーや小津安二郎にも影響を与えたといわれている。ウディ・アレンの作風もルヴィッチ系列にある。
俳優(ダンサー)夫婦と隣家に住む医師夫婦が互いの連れ合いと仲良くなろうとするストーリーで、ホームコメディにはよくある設定である。こういうのもクロス・カップリングというのだろうか。クスリと笑えるシーンがいくつも織り込まれている。ただし、弁士も音楽もない無声の映画。ちょっともの足りない気もする。
「アフリカ珍道中」は大ヒットしたシリーズのひとつ。ボブ・ホープとビング・クロスビーのコンビに、ドロシー・ラムーアがからむコメディである。おおらかでいい。アフリカ原住民を差別しているといえばそうだけれど、当時は別にどうってことはなかった。それにしても、クロスビーの声の響きはいい。この声は映画館でしか楽しめない。
1941年の作品。太平洋戦争が始まった年である。戦意高揚的な雰囲気は一切ない。このあと、このシリーズは戦中、戦後にも作られている。
加山雄三の「若大将シリーズ」はこの珍道中シリーズに原型があると気付いた。加山雄三と田中邦衛。これに星由里子がからむ。歌が入るのも似ている。
似ているというより、こうした形式はひとつの定番になっていると言った方がよいのかもしれない。
シネマヴェーラ、次回の特集は、中村登監督である。
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