「ほどほど落語長屋」 川柳の大ガーコン
タイトルは「ほどほど落語長屋」。ほどほどって何よ? テキトーに、ってことか。長屋だから「粗忽の釘」でもやるのだろうか。ま、そんなことはどうでもよい。場所は北沢タウンホール。八十代から三十代まで年齢差のある四人会である。一之輔、白酒、左談次、そして川柳。四人会ぐらいになるとけっこう座席に空きがあるものだが、会場は満員となった。
開口一番は無し。オープニング・トークで四人が登場。川柳さんは背広姿である。いつもは七分目だが、きょうの打上げは目一杯やると言う。わー、たいへんだ。川柳さんは落語会一の酒乱として知られている。一之輔は、このあと末広亭のトリがあるので打上げには参加できないと嬉しそう。
演目を紹介しておく。長屋ものはなかった。
春風亭一之輔 蝦蟇の油
立川左談次 無精床
桃月庵白酒 死神
川柳川柳 ガーコン(大ガーコン)
蝦蟇の油は、油売りが酔っぱらって口上をするところが後半の見せ場だが、それを川柳師匠よりもさらにヘベレケに演じるのが一之輔風である。これが可笑しい。
左談次は、川柳師匠との古い付き合いを語る。酔っぱらった川柳師匠を抱えて歩くと、耳元で口トランペットをやる。これがうるさくて困ったと笑わせる。
白酒の「死神」は先だって聴いたばかりである。でも、たっぷりアドリブも交えてだから、新鮮である。体型にあわせて、死神が太目であるところが笑える。オチは、こまかい説明は省くが、小三治風から志の輔風にシフトする。これが白酒風である。この噺を聴いたことがない人はなんことかさっぱりわからないと思うが・・・、要は、工夫が凝らされているということ。
川柳ネタもおもしろい。むかし仲間内の若手が人気投票をしたら、人気噺家のトップが川柳だった。嫌いな落語家でもトップだった。キムタクと出川が一緒になったような噺家と説明していた。これはわかりやすい。
さて、トリの川柳師匠は御年83歳。衰えたりといえ、いまだ声量は健在である。もちろん演目は「ガーコン」。打上げの愉しみがあるから早めに終わるかと思っていたが、きちんと最後まで40分近くやった。(数年前、1時間10分ぐらいやったのを聴いたことがある)
軍歌を楽しそうに歌う。これだけで受けるのだから大したものである。足腰が悪くなったので、最後の脱穀機の場面を省くことも多くなったが、この場面がないとガーコンにはならなくなってしまう(ガーコンは脱穀機を回す音)。こんかいは立ち上がってガーコン、ガーコン。妻も一緒に稲を手渡しするのが「大ガーコン」になる。
ということで、川柳師匠。これが見納めとならないようにといつも思っているが、まだ二三年は大丈夫のようである。
打上げも、さぞや賑やかになったことと思う。
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