「紙の月」 ありがちな出来事

「紙の月」を観てきた。ペーパー・ムーンね。久しぶりに宮沢りえが出演している。原作（角田光代）は読んではいない。テレビドラマ化されているそうだが、それも観ていない。

平凡で真面目な女性銀行員が、若い男性からデートに誘われたことをきっかけに不倫関係になる。そして、銀行の金に少しずつ手を付け、泥沼にはまっていくという物語である。

　この手の金にまつわる不祥事は、直接間接に何例も見聞きしてきた。よくある話である。男の場合はギャンブルが原因のことが多い。女の場合は男である。ほとんどが十人並み以上の容姿。なぜ男に貢ぐのか、そのあたりの機微はよくわからない。仕事はよくできるから任せてしまう。周りからの評価も高い。したがってチエックも甘くなる。

　多くは大げさになる前に発覚する。ふんわり収めるから刑事事件となることは少ない。事件になるのは氷山の一角といってよい。監査や異動時の引継で見つかることが多い。裁判所からの給料差し押さえ（サラ金の借金）の手紙で発覚することもある。

　ということで、この映画も、ごくふつうの主婦が、契約社員として働くうちに、年下の男（大学生）と仲良くなり、のめり込んでいく姿を描く。背伸びしてプチ贅沢をする。預かった金を銀行には入れず、私物化する。援助交際のような関係を続ける。出会いから資金援助までを丁寧に描いていく。ありふれた話をきちんと描いている。

　ベテラン女子行員役の小林聡美が存在感のある演技をしている。大島優子のちゃらんぽらんぶりもいい。りえちゃん（とは言ってはいけないだろうが）の抑制のきいた演技がいい。発覚によって解放されたかどうかはわからないが、犯罪者の透き通ったような罪の意識が印象的である。

　ありがちをたんたんと描いた映画である。

　恋も、仕事も、友も、善意も、しょせん、にせもの、薄っぺらなペーパームーンというわけである。

　ついでのひとこと

　りえちゃん、足が細い。でも、足は速そう。