「滝を見にいく」 とぼけた味わい
「南極料理人」や「横道世之介」などを手がけた沖田修一脚本・監督作品である。沖田作品からはほのかに可笑しみが漂ってくる。ほんわかとした緩さがなんとも心地よくて、けっこう気に入っている。
今回の「滝を見にいく」もまさにその沖田ワールドである。滝見物と温泉のバスツアーに参加した七人のおばさんたち。40代から70代。不慣れなガイドに連れられて山道を登っていくのだが、道に迷ってしまう。ガイドは道を探しに出かけていくが、いっこうに帰ってこない。ケータイも圏外。そこで、七人は山を下りようとする。しかし、いっこうにたどり着けず野宿をするはめになってしまう。
おばさんたちの会話が可笑しい。トンチンカンであったり、とぼけていたりする。セリフともいえないようなたわいもない会話が続く。このあたりは、実際に映画をご覧になっていただきたい。
おばさんたちのキャラクターはそれほど明確ではない。もちろん性格付けはされているのだろうが、それを前面に押し出すことはない。カメラ好きだったり元オペラ歌手だったり、離婚歴があったり、さまざまだが、家庭環境も深くは描かれていない。はっきり性格づけしないところがよい。
いさかいもあって、「四十過ぎたら女は同い歳や!」なんていう絶叫セリフも飛び出す。
で、野宿。横になって、みんなで歌う。これが「恋の奴隷」なのだ。奥村チヨの、「あなた好みの あなた好みの 女になりたいー」というアレ。そんな状況で歌う曲ではない。このシーンがなんとも可笑しい。
著名な俳優は出ていない。おばさんたちはオーディションで選んだほぼ素人とのことだ。すべて妙高の山道でのロケ。低予算で作っていることがわかる。でも、中身はおもしろい。ユルユル感がいい。
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