『鬼不動』 談志の了見
立川談志の若いころのCDをいくつか聴いた。円熟してからの談志との違いはスピードである。立て板に水。とにかく速い。滑舌もいい。聴いていて心地よい。人気になるはずだ。
その談志が亡くなって三年が過ぎた。談志本も一年前の談四楼の『談志が死んだ』あたりで打ち止めと思っていたのだが、その後もいくつか出ている。極めつけは本書『立川談志 鬼不動』(弟子吉治郎著)である。談志を神格化した小説、架空話である。
序章で、天国に召された談志が志ん生、三平と出会う。新宿の寄席で一回だけ演った「鬼不動」を披露することになる。第一章以下は、生前に戻り、鬼不動のネタ下ろしまでが描かれる。
「鬼不動」は人情噺である。大工の幹太は大家の世話で嫁さんをもらうことになる。ところがもらった嫁さんは鬼のような形相をしていた。
三味線、笛、太鼓の鳴り物を舞台に上げ、談志は、けれんたっぷりに演じる。
大家にどなり込むのだが、嫁さんとなるお俊ちゃんの過去があきらかになり、情感たっぷり展開となっていく。
業の肯定ではなく、極めつけの人情噺である。フィクションであるが、談志はこうして神格化されていくんだろうなあ。
ついでのひとこと
ところで、せんだって、談志の旧家、練馬の家は志らくが住むことになったと書いた。11月30日の「ビフォーアフター」の番組で、そのことをやっていた。まだできあがっていないので、番組は改装に入る前までだった。改めて、後日、続きをやるという。
まとめて、やればいいのに。
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