クイクイ読ませる『ナオミとカナコ』
奥田英朗の新作。
百貨店の外商に勤める直美。大学時代からの親友・加奈子が夫からひどい暴力を受けていることを知る。離婚も親にも相談できない状況にあった。この苦境から脱出すべく、直美は加奈子に夫殺しをもちかける。そして周到に準備し、実行する。死体は丹沢山中に埋める。
ここまでが第一章。直美の視点で描かれる。中国人の描き方がおもしろい。中国人の女実業家・李朱美のキャラが際立っている。
奥田英朗はエンターテイメント作家のトップランナーといってよい。ストーリーの組み立てがうまい。平明で的確な文章でクイクイ読ませる。クイクイ読ませるとは殿山泰司がよくつかった表現だが、最近、それほど読ませるミステリーは少ない。もっとも、あまりミステリーは読まなくなったこともあるかもしれないけれど・・・。
第二部は加奈子の視点で描かれる。完璧と思われた犯行だったが、いくつかのほころびがあった。夫の妹などが登場し、次第に加奈子と直美は苦境に立たされていく。このあたり、初期の作品『最悪』『邪魔』を思い出させる。
で、どうなるかは明かすわけにはいかないが、ノンストップで最後まで読んでしまう。「巻措くあたわず」という古典的表現がぴったりである。
「読め! 読め! 読め!」なんていう書評表現を思い出す。
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