百栄と一之輔 奇妙な組み合わせ
春風亭一之輔と春風亭百栄の二人会に行ってきた。一昨日だ。場所は成城ホール。同じ春風亭だが芸風はずいぶん違う。不思議というか奇妙な組み合わせである。この二人の会、一年半ぶりだそうだ。微妙に間隔があいている。
一之輔は当ブログでは何度も採り上げたので、今回は百栄中心で。
百栄はけっこう人気者である。落語は下手ではないけど、かといってすごく上手いというわけではない。そこそこ。風貌は、おかっぱにしているので可愛い。これで五十過ぎの中年とは思えない。どことなく可笑しみの匂いが漂ってくる。脱力系である。
なんと表現をしていいか考えていたら、「落語界一のゆるキャラ」というフレーズが浮かんだ。といっても、もっとゆるいキャラもいるけれど・・・。
落語は新作派。以前「天使と悪魔」という新作噺を聴いたことがある。新作か古典かで揺れ動く心境をテーマにしたもので、おもしろかった。今回はどんな噺をやるのか。
で、演目。
百栄 あの姉妹
一之輔 茶の湯
一之輔 星野屋
百栄 マザコン調べ
「あの姉妹」は、叶姉妹ふうの姉妹が零落して上野公園で缶拾いをしているというお話。姉妹のやりとりがなんともゆるくて、おかしい。苦笑したくなるようなすべるギャグ。これが百栄ワールドである。
続いて登場した一之輔、いきなりぼやく。なんだ、あの姉妹は・・・。どうしてあんなのと二人会をやらなきゃいけないのだ。成城はいいことがない。こしらと組まされたり・・・と、笑わせる。たしかに北野武と蛭子能収の組み合わせのようでもある。
で、一之輔は「茶の湯」。以前よりもさらにパワーアップしている。ばかばかしさも増幅され、古典に毒を盛れ! という雰囲気をいっそう打ち出している。
トリの百栄は「マザコン調べ」。古典の「大工調べ」の改作。大工の棟梁と与太郎をマザコンの息子とモンスターママに置き換えたもの。息子がつきあいたいという娘を徹底的にバカにしながらも、息子とつきあえと要求する。棟梁が啖呵を切るところが「大工調べ」の見せ場だが、それと同様に母親は啖呵を切る。とぼけた啖呵でおかしい。
受けないギャグで失笑させるうちに、しだいにおかしみの世界に引きづり込んでいくのが百栄流である。
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