ぼくは二十歳だった・・・
きょうは成人の日だった。ああそうか、晴れてよかったね程度の感慨しかない。ちかごろは成人式でやんちゃをする連中も少なくなって、マスコミで大きく採りあげられることも減った。
あれから何十年、自身の成人式はどうだったかというと、市長や議員さんが祝辞を述べ、記念品として、性病予防の冊子(たしか「アラバマの追跡」とかいう表題がついていたとおもう)が渡されたのを記憶している。二十歳の記念が性病予防かよと、呆れた。こんなものより、コンドームを1ダースぐらいくれればいいのにと悪友たちと戯ればなしをした。
二十歳で思い出した。先月だったか、新聞の俳壇でこんな句が目に留まった。
初霜やポール・ニザンの本に折れ
ポール・ニザンの、たぶん『アデン・アラビア』だろうが、久しぶりにそれを手にしたとき、折ってあるページがあるのを見つけた、そんな句だろう。
ただそれだけの句で、秀句ともいえないが、ポール・ニザンという固有名詞に反応してしまう。たぶん詠み人は60代以上の人だろう。*ポール・ニザンは、フランスの、サルトルと同世代の思想家。
『アデン・アラビア』は若者にもてはやされた。その内容というより、最初の数ページに惹かれた。
「ぼくは二十歳だった。それが人の一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい」
冒頭の文章である。 ジャヴェ・ヴァンタン、セ・ラ・ベラージュ・ドゥ・ラ・ヴィ(いまでもフランス語ですらすら言えるのは、ちょっと恥ずかしい)・・・・かっこいい。大人に反抗するような勇ましさもあり、青春の思い通りにいかない苦悩や非情さも感じさせる。
とくと考えれば、斜に構え、虚勢を張った若者をとらえただけで、とりたてて人生の指針となったわけでもないのだけれど、ファッションとしてはかっこよかった。
ま、二十歳は美しいかもしれないが、ろくでもない年齢であることも確かだ。
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