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2015年3月30日 (月)

 談志のまくら その了見

 

 一流の噺家は総じてまくらもおもしろい。時事的な話題や身辺雑事を可笑しく語る。

 米朝亡きあと、落語界唯一の人間国宝となった柳家小三治は、まくらが長いことで有名である。まくらに一時間を費やすこともあった。でも、ファンから文句は出ない。そっちの方も、そっちの方がというべきか、おもしろい。小三治のまくらだけを採録した本もでている。『ま・く・ら』など三冊ある。いずれも中身は濃く、さすがまくらも小三治の芸である。

 談志のまくらもおもしろい。まくらを集めた『談志のまくらコレクション』(竹書房 文庫)が出版された。若いころのもの(昭和40年以降)から晩年近くのものまで収録されている。

 ひとことで感想をいうと、談志の悪たれである。常識をひっくり返す、つまり意表を突くようなものが多い。だから、とんでもない奴だと批判を浴びることになる。

しかし、談志ファンは、談志だから許されるギャグだと評価する。暴言であっても、笑える。だから談志はライブで聴かなくっちゃ、となるが、今となってはCD・DVDで聴くしかない。

 本書から一部を紹介する。昭和46年のひとり会。参議院議員になったかならないかの頃である。

ソビエト(ソ連がまだあったころ)が蟹を獲らせてくれないのを怒ってのまくら。

「だけど、くれなきゃ、蟹がこっちにくるようなことを考えればいい。(中略)

ソビエトの方へ、柿の種を放っちゃうんだな(爆笑・拍手)。こっちに、握り飯を、こう置いておくわけなんだな(笑)。すっると、蟹が全部こっちへ、・・・・・これで当選するのかね(笑)。そういうことを日夜考えている(笑)。」

 暴言というより、バカ話、笑えるジョークである。

 

 この本には特典がある。スマホでQRコードを使って談志落語三席をダウンロードできる。「源平盛衰記」「三軒長屋」「芝浜」。「源平盛衰記」を聴いてみた。52歳の時のもの。若いころの録音しか聴いたことがない。

若いころの方が迫力があるけれど、まくらや途中織り込むギャグはこっちの方が過激である。過激と言うより暴言にちかいか。その暴言を楽しんでいただきたい。

 ということで、本書、お買い得である。

 

 ついでのひとこと

 談志が生きていたら、どんなまくらになるのか。

「イスラム国、マンセイ!」ぐらいのことは間違いなく言うんだろうね。

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