禿げた筆
定期的に歯科医に通っている。治療ではなく、歯のクリーニング、歯石をとってもらっている。
丁寧に磨いているようでも磨き残しはある。そこにたまった歯垢が歯石になる。とくに奥歯(親知らず)の周辺はなかなかうまく磨けないので、歯石がつきやすい。
以前、医師から筆先のようなブラシで磨くよう勧められた。ブラシの部分が小さく、ピンポイントで磨ける。奥歯の裏側まで磨ける。歯と歯の間がよく磨けるような気がする。
けっこう長持ちするが、この歯ブラシも筆先が広がり、丸くなってくる。これでお役御免、あたらしい歯ブラシに取り替えることになる。
筆は使い込むと、筆先(穂先)の毛が抜ける。書がうまく書けなくなる。この筆を禿筆という。ハゲである。禿げたわけではなく、毛先がすり減って、丸くなっただけだけど、禿という漢字を用いる。てっぺんあたりがやや薄くなっただけだが、ハゲである。ちょっとかわいそうな気もするが、うまく書けなくなるならば、そう呼ばれても致し方ないか。
ならば、丸くなった歯ブラシは禿歯ブラシである。これも禿筆ということになるか。
一般に、禿筆は自分の書を表す謙譲表現としても使われる。拙文、拙著などの拙と同様である。『三省堂国語辞典』で拙を引くと、用例に「拙ブログ」がある。ほほう、いまどきの表現である。
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