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2015年3月 8日 (日)

「二重生活」  チャイニーズ・ミステリー

「天安門、恋人たち」で五年間映画制作禁止処分を受けたというロウ・イエ監督作品である。
冒頭、若い女性が車に撥ねられ死ぬ。頭部には殴られた痕があった。刑事は事件の疑いを持ち、調査を始める。 ルージエは幼稚園に通う娘がいる。同じ幼稚園に通う子の母親サンチ―と仲がよい。ある日、その友とカフェにいるとき、夫・ヨンチャオが若い娘とホテルに入るところを偶然見かける。ケータイを調べたり、夫の行動を探ると、夫が若い娘のほかに、サンチ―とも家庭をもっていることを知ってしまう。 ヨンチャオは、絶倫男といった雰囲気はないが、事業に成功している証のように複数の女に手を出していた。一人っ子政策があるから、別の家庭で子を作っていたとも考えられる。その付き合っている若い女が冒頭の交通事故で死んだ女性だった。ヨンチャオのうまくやっていた二重生活はここから崩壊していく。
 中国サスペンス映画というと、松本清張の世界を感じさせると以前書いたことがある。設定としてはこの映画もそうだが、「薄氷の殺人」ほどにはその匂いはない。ちょっと残酷なところは韓国映画を感じさせる。 「薄氷の殺人」が北の地方都市が舞台で、凍えるような映画であったのに対し、「二重生活」はPM2.5たっぷりの大都市(長沙?)が舞台である。現状通りうまくやっていきたいヨンチャオだが、そうはうまくいかない。ルージエは感情を露わにし、少しずつ荒れていく。そして、若い娘の事件の真相が明らかになる。ヨンチャオを独り占めしたいサンチ―の陰謀が浮かびあがる。ここまでが全体の三分の二ぐらい。
 真相はしだいに明らかになり、あらたな犯罪へとつながっていくのだが、エンディングはちょっと中途半端。登場人物、それぞれが均等に描かれていないので、不満が残る。 これがハネケ監督(「白いリボン」とか「隠された記憶」)なら、唐突にエンディングにもっていくとしても、リドル(謎)をなげかけて終わる。ハネケ監督と比較すると(別に比較しなくてもいいのだが)、もう少々工夫があってもよかったのではないか。
 ほとんど手持ちカメラだけで撮った映像は悪くない。登場人物の揺れ動く気持ちや不安を上手く映しだしている。

 今週、アルテリオでは、「二重生活」と「薄氷の殺人」をやっている。立て続けで観るのもいい。でも、ウーン、ちょっと重いかな。

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