談笑ワールド 三席
「この落語家を聴け!」、今回は立川談笑。二回目である。
談笑落語は、古典噺を現代風にアレンジするところに趣向がある。「ジーンズ屋ようこたん」は「紺屋高尾」、「シャブ浜」は「芝浜」の改作であるが、ほとんど新作といってよいものもある。
古典噺のカビ臭さ、不可解さをそぎ落として、あらたに現代風の装いをする。なぜ現代風にするのかといった理論づけをきちんとしているのが談笑落語である。その理論づけを、立川こしらは「談笑は理屈屋だ」と批評する。
ま、たしかに、理屈という面もあるが、談笑の理論は的確である。落語界一の理論家でもある。
もうひとつ、談志流の毒舌も光る。高座では、テレビならピーという遮断音が入るであろう悪口、放送禁止用語が飛び出す。これがおもしろい。だから、談笑の高座はライブで聴くべきなのだ。
開口一番は立川笑二。演目は「元犬」。古典噺を忠実に演じるが、そのなかに独自のギャグを織り込み、笑二ならではの芸に仕上げている。
談笑の演目は三席だった。
イラサリマケー
粗忽の釘
猿の夢
よくやる演目である。いずれも以前聴いたことがある。
「イラサリマケー」は「居酒屋」の改作だが、まったくの別物といってよい。ビルマ人の居酒屋店員の珍妙な日本語を題材にしたもので、多少差別的な色彩ときわどい(エッチな)表現が聴きどころ。イラサリマケーとはいらっしゃいませ。そうしたカタコト表現がならぶ。何度聴いてもおもしろい。
「粗忽の釘」は先週、三遊亭兼好を聴いたが、それとはずいぶん味わいが違う。兼好はとぼけた明るい雰囲気を感じる。談笑バージョンはダイナミックである。「大工調べ」「花色木綿」「宗論」などの古典噺の一部を取り込んだギャグを連発させる。
このあと、広瀬和生さんとのトーク。立川流の現在、「江戸の風」などの話に及んだが、業界ディープな話題が多かった。これは割愛。
トリネタは「猿の夢」。癌の健診で染色体が少ない、おまえはサルだと言われた男の話。SFスラップスティックコメディである。ばからしく、何度聴いてもおもしろい。
5月には同じ北沢タウンホールで「談笑十八番」という独演会がある。ファン投票によってトリネタを決めるという。さて、どうなるか。「シャブ浜」あたりが本命か。
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