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2015年4月 1日 (水)

「妻への家路」  チャン・イーモウ作品

 

 都心に出たついでに、日比谷シャンテで妻への家路」を観てきた。チャン・イーモウ監督作品である。

文化大革命後の夫婦を描く。20年間、収容所で過ごした夫が1977年に解放され我が家に帰る。妻(コン・リー)は健在だったが記憶障害があり、夫を認識できなかった。夫はさまざまな方法で妻の記憶を呼び戻そうとする。

 この手の映画(夫婦どちらかが記憶を失っているという設定)には、古くは「心の旅路」がある。タイトルからして似ている。あれは夫の方が記憶喪失になる映画だった。もうひとつ、「かくも長き不在」がある。これも夫が記憶喪失になっている物語である。いずれも名作だが、とりわけ「かくも長き不在」は、名作中の名作である。夫がなぜ記憶を失ったか最後の最後でわかる。マルグリッド・デュラスが脚本を書いている。アリダ・ヴァリ主演。アリダ・ヴァリは「第三の男」のラストシーンの女性といえばおわかりだろう。

 

「妻への旅路」のコン・リーは、チャン・イーモウの初期の作品、「紅いコーリャン」「菊豆」などに出演し、世界的な女優になった。中年から晩年までを演じている。

夫・陸焉識は大学教授であったが反革命分子として収容所生活を送ることになる。途中、脱走を図るが、妻・婉玉と会う直前で、拘束され、収容所に戻される。冒頭はこのシーンである。

文化革命後、家族のもとに帰るが、妻は夫を識別できない。心因性の記憶障害を病んでいた。娘はバレーの学校に通っていたが、主役を降ろされ、いまは別居し、働いている。 

夫は記憶を呼び戻そうと懸命に努めるが、はかばかしい成果は得られない。夫は近所に住み、かつて収容所で書き溜めていた妻への手紙を読んでやる。細かな字なので妻には判読できない。読むだけの存在(手紙を読む隣人)にいらだちを覚えるが、忍耐強く妻の記憶を呼び戻そうとする。

妻の記憶には5日に夫が帰るという手紙の記憶が残っており、毎月5日には駅に出向いて夫の帰りを待つ。中国版「岸壁の母」である。夫は、それにも付き合う。

ピアノを弾くことで妻の記憶を呼び戻そうとするシーンがある。かつてよく弾いた曲である。ここで記憶は戻るのかと期待するが、そうでもなかった。

で、妻の記憶はもどるのか。それは観てのお楽しみ。

コン・リーは、中年から晩年までを演じると書いたが、いわば田中裕子から北林谷栄までを演じるといったほうがわかりやすいか。

ドラママチックなシーンは少ない。夫の耐える姿を淡々と描いているところが見どころである。

よけいな連想だが、今どきの日本を連想してしまう。夫婦どちらかが認知症になってしまい、つれあいに「どちら様ですか」と訊ねるようなシーンを。ひとごとではアリマセン。

 

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コメント

妻のコン・リーが夫の帰還を必死に待ち何とか会おうとする前段のスリリングな展開。一転して無事帰れた夫を認識できない後半。この空白期間に何が有ったかは不明なのだが妻はひたすら夫を待ち続けるー。文化大革命で理想や幸福感情を打ち砕かれたのは逮捕された夫だけではなかった。帰れた後の修復、妻の記憶を取り戻していくプロセスが、夫婦とは何かを深く考えさせる作品だ。ロミオとジュリエットの悲劇が二人で幸福を探し求める理想のパートナーに変容していく!!そこが本
作の魅力だしそこに救いがある。いい意味で大メローデイ・ドラマだった。

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