白鳥の荒唐無稽ワールド
今月の「この落語家を聴け!」は三遊亭白鳥。
新作ならこの人だろう。師匠・円丈が切り開いた道をきっちり歩んでいる。創作のレベルも高いので、他の噺家が演じているものもいくつかある。したがって爆笑噺の古典として残っていくものもあるかもしれない。改作ものもハチャメチャで愉快である。
今回の演目はつぎのとおり。
「黄昏のライバル 談春師匠編」
「真夏の夜の夢」
聴くのは初めて。
「黄昏のライバル」は二十年後ぐらいの落語界の噺。名人と謳われ、落語協会の会長になり、そして人間国宝となった落語家、それが談春という設定である。なんで立川流が落語協会かよ、といったツッコミは、この際、どうでもよい。それが白鳥ワールド。
立川談春は超人気の噺家である。チケットは即完売。大ホールでも満席となる。なぜこれほど談春は受けるのか。たしかに談春は上手い。しかし即完売するほどの芸ではないと談春ファン以外の落語ファンは思っている。そこを突く。その飛ぶ鳥を落とす勢いの談春をからかう。悪口がバンバンとびだす。コワモテ談春のものまねも入る。似てないけど。
それを談春がいる前でもやったそうだ。人の悪口は当人のいるところでやるのが人倫にかなっている、かどうかはわからないが、これが白鳥流である。
「なぜ談春は独演会が多いのか。市馬やさん喬と一緒に演ると、(談春の芸が)たいしたことがないのがばれるから」
場内爆笑。ただしこれにコメントが入る。「私だって談春師匠の前では言いませんでしたよ。言えませんよ。だから、今言ったことは内緒ね」。さらに爆笑。
二席目の「真夏の夜の夢」は、強盗で奪った五千万円を寺の裏に埋めておき、ほとぼりが冷めたころ掘り返しにいく二人の泥棒の噺。不発弾を掘り返してという展開になる。荒唐無稽。ばかばかしいけれど、終わってみれば納得、できるわけじゃないけど、なんとなくおさまりがつく。そこが白鳥の巧みなところである。おもしろかった。
白鳥には「渡世ブタ・豚次」シリーズがある。全十話を完結させた。私は「任侠流山動物園」ともうひとつぐらいしか聴いたことがない。機会があればと思っている。そして来週の11日からの鈴本演芸場の中席、「落語の仮面」を演るそうだ。これは「ガラスの仮面」のパロディというかオマージュ作品。
面白いのだろうけど、「ガラスの仮面」が少女マンガだってこと以外は、まったく知らないんだよね。アナタ、読んだことあります?
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