「マネー・ショート」 リーマン・ショックの内幕
リーマン・ショックの原因になったサブプライム・ローンの破綻を予測した金融マンたちを描いた作品である。
サブタイトルに「華麗なる大逆転」とある。サブプライム・ローンの危うさに気づいたマイケル(クリスチャン・べール)はその実体を調べ、投資会社とCDS契約を結ぶ。CDSとは債券が下がった場合にそれを保証するもの。サブプライム・ローンが破綻した場合、保険金を手にすることができる、いわば逆張りの商品である。
映画はテンポよく進む。難しい用語は、登場人物がカメラに向かってワンポイント解釈を加える。コックを登場させ、鮮度が落ち廃棄するようなサカナをシチューにして客に出すようなものと説明する。親切であるが、わたしの頭ではついていけない部分もある。かといって映画が難解でつまらないというのではない。むしろおもしろい。ユーモラスで痛快でもある。
サブプライム・ローンは低所得層に対する住宅ローンであるが、実にいい加減な査定で貸し付けた。その破綻がただちにリーマン・ショックにつながったわけではない。もっと複雑。不良債権をいくつも組み合わせて砂糖をまぶしてあらたな債券(CDO)をつくって売りまくった。砂糖でまぶしたのではなく猫の糞で固めたトンデモ債券であった。買い手はリスク分散商品と思ったが、実はリスク拡散であった。
当時はローンが破綻するとは誰もおもってはいなかった。ローンの審査は甘く、格付け会社も適当にAAAだのAAに格付けをした。そこに疑惑を感じた連中が、実体を調べ、債券の空売りを提案するが、まわりはそれを認めない。そこを突破していく姿を描いている。
サブプライム・ローンがつぎつぎと破綻していくのだが、CDOはしばらくは暴落しなかった。このあたりはよくわからないが、華麗なる逆転にいたるのはもう少し先で、彼らをヤキモキさせる。
なかなかおもしろい映画だった。
ついでのひとこと
結局、サブプライム・ローンで儲けたのは、投資銀行の幹部。破綻前に退職金をたっぷりもらって退任した。破綻後でも平然ともらった連中もいた。損をしたのは、投資家。とりわけ年金基金。アナタも損をしたのだ。
さらにひとこと
監督は日本好きのようである。途中、村上春樹の『1Q48』からの引用があったり、スシ屋での食事のシーンがある。店内には日本語の歌が流れている。エンドロールで「最後の言い訳」という歌だとわかった。徳永英明の曲。
さらにさらにひとこと
この映画、アカデミー脚色賞を受賞した。うまいこと映画にしはりましたな、といった賞である。納得。
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