『不機嫌な作詞家 阿久悠日記を読む』
阿久悠についてはことさら説明することもあるまい。
阿久悠が備忘録のような日記を書いていたのは知られている。その日記をベースにした評伝である。著者三田完はNHKのプロデュサーを辞した後、阿久悠が亡くなるまでそのマネージメントの仕事をしていた。いわば阿久悠の伴走者、評伝の著者にふさわしい。ついでに言うと、「小沢昭一の小沢昭一的こころ」の脚本も書いていた。
阿久悠についてはそこそこのことは知っているつもりだったが、それは表面的なこと。本書で、へー、そうだったのというエピソードをいくつも知った。
たとえば、「時代おくれ」というヒット曲がある。「目立たぬように、はしゃがぬように」という歌詞、あれは中学生の頃、肺を病んだときの医者の言葉を連想させると著者は言う。 休学中の阿久に、医者は学校に行く条件として、はしゃがない、興奮しない、怒らないことを守れと語った。
山口百恵の歌は書いてない。不思議なことである。別に嫌っていたわけでもない、相性が悪かったわけでもない。たまたま書くチャンスがなかっただけだが、日記に山口百恵について書いている。
山口百恵は原節子の隠し子であると云う仮説で何が書けるだろうか。
そういう小説があったら面白い。
晩年は癌との闘いだった。日記もその記述が多い。たったひとことだけ引用する。
生きることに 飽きるな
阿久悠について書きだすとキリがないので、私の好きな小説と歌詞を書いておく。
『飢餓旅行』 『瀬戸内少年野球団』よりこっちの方が好きだな。少年がタケノコのように成長していく姿が清々しく描かれている。
好きな歌は「ざんげの値打ちもない」。
あれは八月 暑い夜 すねて十九を越えた頃 というフレーズにしびれた。
歌ったのは北原ミレイだが、山口百恵がカバーしても悪くない。
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