「とうもろこしの島」ジョージア版「裸の島」
ジョージア(グルジア)映画である。ジョージアについてはまったく知識がない。知っているのは、ソ連邦から独立いた国で、栃ノ心の出身国といった程度だ。
老人が川の中州にやってくる。小屋を建て、中州を耕してトウモロコシの種を播く。孫娘と思われる少女と一緒である。時折、銃声が聞こえ、ボートで兵士がやってくる。このあたりが戦場であることがわかるが、激しい戦闘場面はない。若い兵士は娘に色目をつかう。そんな日常が淡々と映し出される。前半、セリフはいっさいない。ふーん、ジョージア版「裸の島」ってことか。
ある日、トウモロコシ畑で傷ついた若い兵士を見つける。敵か味方かはともかくとして兵士を匿い、介護する。
少女の両親は戦死した。それを老人が育てている。それ以外のことはセリフも少なく状況説明もないので想像するしかないが、戦争の非情さ、むなしさといったものをほどよく映し出している。ほどよくであって、声高ではないところがいい。
アルテリオ映像館では来週、もう一本、ジョージア映画を上映する。「みかんの丘」。これもジョージア内紛を描いたものである。時間があれば観にいこう。
この映画のチラシに、ジョージア内戦である「アブハジア紛争」についての説明が載っていた。知らなかった。なるほどそういうことかとわかる。
コーカサスの南にある国ジョージア(グルジア)で1991年のソ連邦解体をはさんで激化した紛争。ジョージア内に自治共和国としてあったアブハジアは、ジョージア人と異なるアブハジア人が居住する地域。人々は歴史、文化、宗教、言語等、独自の民族アイデンティティを持つ。1980年代後半、ジョージアの民族主義者が統合を主張したことに対して、アブハジアが反発。分離独立の機運が高まり、1992年のアブハジア独立宣言後、大規模な軍事衝突が続き、多くの犠牲者、難民がでる。1994年に停戦合意が成立したが、今日も緊張が続いている。
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